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コラム

第24回

「経営者の痛み」

いきなり、爪を剥がされたら痛い、指は動くが大変な痛みだ、しかし、他人からは見た目にはそんなに目立つ怪我ではないので解らない。

ところが、本人は痛くて仕方がない。そんな時でも、経営者は、痛くて作業ができないという言い訳は成り立たない。まさに、経営者の日々の苦しさは、傍目にはわからない。

予期せぬ事でお金が必要になり、予算の変更や修正をする事は多々ある上、丹精込めて育てたはずの社員に砂を蹴るどころか、大きな穴を掘られて辞められたり、驚く事に人材を引き連れて競合の会社を創ったりされるのは日常茶飯事の如く起きている。

親切に見えた業者や銀行は雨が降ると傘を取り上げ、服も剥ぎ取りかねない勢いに豹変するし、友人や家族も景気のいい時は笑顔で優しいが、苦しくなると批判と不満の嵐になり微妙な空気が流れ出す。そして、とうとう、会社が倒産しようものなら、ただの愚か者の烙印を押され、その後に名を上げるのは並大抵の努力ではすまない。

何万分の1の確立で困難に耐えぬいて、存続発展し勝ち抜いてきた者だけが勝者となり、世間に評価される。では何故、経営者という、華やかな一面苦しい思いをする職という事がわかっているはずなのに、経営をつかさどる身になりたいのか。

それは、まずは、怪我をしても、足を折ってもやり続けたい事が、または、背負った責任が、目的があるからだと思う。やりたい事、やらねばならない事の想いが強いから、全ての我慢が出来る。我慢が出来たら自信もつく。自信がつくと言葉に行動に迫力が出る。

メンバーは、その姿に、経営者の想いに打たれてついていくものだと思う。そして、その想いが本物であればあるほど、本物の人材が揃うのだと思う。

人材が揃っていれば経営者の爪が剥がれても、誰かが代わりに、細かい作業もしてくれる。そして、その代わりを務めてくれる事を、正当に評価することの出来る会社であればこそ、ますます人は育つのだと思う。

そうすれば、経営者の怪我(減収、減益、負債、事故)等はすぐに治る。歩き続ける(経営する)限り、小さな怪我から大事故まで様々な事に直面するのは仕方が無い。いかに早く、社員の協力で完治させる事が出来るかが、その会社の技量という気がしている。

先日、クリーク&リバー社(クリーク&リバーは、創業者の井川氏が、クリエイターを守る為に考えた会社で、数万人のプロフェッショナルが登録している、最も巨大でゆるぎないポジションを占めるクリエイター派遣の企業です。)の井川社長とお会いしました。

というよりもC&Rの主催する花火大会に参加させて頂いたのですが、その時に社長始め、皆さんが、実に繊細な心配りをしてくれた時に、ふとよぎった気持ちが冒頭の想いでした。なにかとお騒がせな私は、楽しいはずの船の宴も、動きだしてすぐの船酔いで台無しになりました。

その私に、なにかれとなく、いやな顔一つ見せずに世話を焼いてくださる女性社員に恐縮しながらも、ひたすら酔いと戦いながら、天を仰いで倒れていました。

冷房に当たりすぎたのか、寒気がして起き出すと、それに気付かれた井川社長が「なにか、毛布とかある?」と船員の方に尋ねられ、用意が無いとわかると、なんのてらいもなくご自分の上着を「これでもましだから」といって貸してくださったのです。

ほんの一瞬の事です、一瞬だからこそ、井川社長が、何万人のクリエイター集団にまで創り上げた本質が、垣間見えた気がしたのです。

井川社長は、自然に親切が出来る方です。だから、社員の方も、気が付く方ばかりなのだと思いました。皆さんの心配りのおかげで、すっかり気分の良くなった私は、その後も特等席を陣取り、思う存分花火を楽しませて頂きました。

井川社長が、同じ携帯を持っていた事に気付いたお友達と、携帯電話のテレビに映る花火の放映と本物を見比べて「これは、おもしろいね。」と無邪気に喜ばれている最中に、私が毎月こんな文章を書いている事を吉井が告げますと、「嘘?ほんとに?社長の?実名で書いてるの?」と、とても驚かれ、止めて欲しいという眼で見られたのですが、今回の題材にさせて頂いてしまいました。

C&Rの皆様の次なる夢はなんでしょうか。きっと叶えられると思います。人の夢を叶えさせて上げようとする気持ちがある方々の夢が叶わないはずがありません。

世の中には、自分を上手にマネージメントできない、有能なクリエイターの方々や、すばらしい名作が埋もれています。 そんな方々や、世に出るべき作品の為にも、C&Rの益々の発展を心から応援しています。

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