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コラム

第104回

「起業アライアンス」

過日、銀座で葬儀ビジネスを立ち上げた若きアメリカ人のアントレプレナーに会った。彼に何故日本で起業したのかと訊ねると、「以前、アメリカの葬儀社に勤めており、日本に留学した際、日本の葬儀業界の不透明な料金体系の現状が、ビジネスチャンスと思い決断した。」とのことであった。

そして、その背景に、「1980年代までのアメリカと、今の日本の現状はそっくりで、身内に不幸があって”いざ葬儀”となると、いったい何処の誰に、どんな内容で、どの位の費用で頼んだらいいのか、多くの方々がその対応に戸惑っていた。

その場の流れで、途方にくれながら依頼した業者と、葬儀の後に費用や内容などを巡ってトラブルが多かった。今では、アメリカの葬儀は「生前予約」によって葬儀業者の料金が透明化され、葬儀先進国といわれるようになっている。」とのことであった。

人生で誰もが一度は関わる葬儀。彼は、徹底した料金の透明化をコアに、冠婚葬祭に投じる費用が全国的にみても高いとされる名古屋への進出を試みていた。

しかし、日本の文化・資金・人材・人脈をはじめ、何もない中でのスタートだけに、当然様々な困難との遭遇の毎日とのことであった。

現在、日本で亡くなっている方の数は、2003年に100万人を突破、それ以降増え続けて昨年は前年比5.4%増の108万人余りとなり、その市場はなんと1兆3,000億。更に現在の人口構成から、2032年には、1兆7,000億~2兆円ともいわれている。

一方、過日、中堅企業の社長から、本業が成熟している我が社にとって最優先課題となっている新規事業として、葬儀ビジネスを手がけていきたいとの話を伺った。

私は、いつも企業内における新規事業成功の体制の方法論は、二つあると申し上げている。その一つは、社内起業家を独立させ、事業開発の場を社内でなく社外に出すことにある。または、スタートしているベンチャーの起業家をグループ内に受け入れ、資本、人材、営業支援により関連会社として立ち上げていく形がある。

個人の起業には様々な立ち上げ方があるが、2兆近い市場に拡大すると予測される葬儀ビジネス業界に向かい、シェアを確保してゆくには、「アライアンス」が、これから大きな戦略となるだろう。

新たな発想として、同テーマの新たな事業が生まれた時、競合と捉えるのではなく、共同で起業してゆくあり方も有効な手段だ。

成長ラインに乗っている葬祭業界が、生前の人生を表現する内容や、透明な料金設定で、有終の美を飾る事業として、発展してだろう。

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