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コラム

第156回

「勝てば官軍」

勝てば官軍、負ければ賊軍。

何事も勝敗においては、勝った方が善であり、正義。何を言っても、何の事情があっても、負けたら、悪であり邪なのだという考え方だ。

そして、ビジネスの上では、負けたら良いとか悪いではなく、負けたら倒産だ。とおっしゃったのは、他界されてはや13年が過ぎた藤田田氏である。

まったくもって、その通り。それにしても、物凄い手腕と人間的な魅力を兼ね備えた素晴らしい方であったとは思っていたが、21年前に書かれた「勝てば官軍」を改めて読み返して、その洞察力や創造力や経営者としての度量に更なる尊敬の念を抱いてしまった。

この目まぐるしい速度で、様々な物が移り変わる時代においても、人々は働いて収入を得て、その収入を消費して世の中が巡っている事には変わりはない。なので、藤田さんの言葉は、今も変わらず新鮮であった。

折々に挟んである、独自の感性での発言も、多少消沈もするが、面白い。例えば、不細工な女子でも必死に化粧をしたり、着飾ったりするとか、男は財布を握っていないとか。言いたいことをズバズバと放ちながらも、勉強するべき視点やビジネスの基本中の基本をわかり易く教示してくださっている。

21年も前に書かれているにもかかわらず、古さを感じない理由は、そこに、間違いない大成功の事実があるからだ。そこを具体的な数値で諭されると尚更に納得感がある。

どこでも、会社という組織は、経営者の方針や役割によって変化をするのは仕方がないが、藤田さんのマクドナルドは多くの経営者を生んで、他社で活躍されている方も含め、そのDNAは確実に継承されている。流石に強いDNAである。

それにしても、ビジネスの世界で成功したい人は数多くいいるが、その中で本当の成功者となる人は希少である。成功の定義もそれぞれあると思うが、まずは、自社の存在をその業界の中で一番になるまでやれたかどうかではないだろうか。また、個人的な成功は、好きな仕事をして、社会に評価され、幸福な家庭と財力を持つことだと私は思っている。

でも、誰もかれもが、成功できるわけではない。賊軍がいるから、官軍になれるのだ。しかし、いつ、それが変わるか分らないのも事実だ。時代の流れはいきなり来る。そして、具体的な努力をして、目標を持って行動していれば、その機会を掴みやすいのである。

ちなみに、ご本の中に、『お金が必要だけどどうしたらいいかと来る人が多いのだが、「いつまでにいくら必要で、今これだけあるのだがどうしたらいいか」と言える人は少ない』とあった。具体的な相談でなければ、具体的なアドバイスは出来ないとも。

確かに、起業したいという人で、数字をしっかり言える人は案外少ない。逆に、数に強い人は資金調達能力も長けていて、何故かプレゼンも上手である。多分、数字を追っていると裏付けが必要になり、それを追求する事で自信も深まるのだと思う。

起業を目指す人は、数字を自分で楽しむ方法を見つけた方がいい。なんと、藤田さんの「勝てば官軍」には、その糸口も載っている。大袈裟だが、経営の迷いを吹き飛ばす指南書と言ってもいい。

なんにしても、成功した人の言葉は重いし、強いのだよ。勝てば官軍だから。

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