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コラム

第231回

「夕張」

過日、10年前に破綻した夕張市を訪ねました。この季節の北海道の夕張は、爽やかな風が流れていましたが、道路は荒れ人影がありませんでした。
かつて炭鉱の街として栄え12万人の人々が暮らした夕張市の人口は、今や9,000人になっています。

夕張市が破綻した時、353億円もの赤字を18年間で返す計画は、税収入8億円の自治体が、どんな緊縮財政をしても「不可能」といわれました。しかし、計画通り95億円を返しています。
これまで、財政破綻した自治体は数多くありましたが、1975年以降、10年を超えて借金を返し続けた自治体はありません。

35歳の市長の鈴木さんは、東京都庁から夕張市に派遣され、都庁を退職後、2011年夕張市長に当選し6年目を迎えました。
自らの年収を7割カット(年収300万円台)し、「支出は、命にかかわること以外は、すべて削る」と宣言して、緊縮財政に厳しく取り組んできました。
結果、260人いた市職員を半分以下の約100人に減らし、市議会議員数を18人から9人に、報酬は40%カット、市民には税や、公共の施設利用料を50%引き上げ、水道料金は1.7倍負担にして、借金を返し続けています。

前例のない規模の借金返済は称賛に値することです。しかし、先々に夢が持てない若者達を中心に市外へ流出し、人口が3割減少しました。移動できない高齢者が残り、財政削減の副作用に苦しみ、町の存続にかかわる状況に陥っています。

しかし、屋台村で出逢った夫妻と酒を飲みながら、「水道料金を安くして欲しい、財政負担を軽くしてほしい」という声を聞くことはありませんでした。

夕張だけでなく現在の地方は、中央からの助成金や、ふるさと納税に依存し、国の財政難と連動して疲弊し、若者は流出し高齢化が進み、加速度的に活力を失っています。

これからの夕張は、「財政再建」だけではなく、地域再生に向けてのインキュベーションが必要です。

夕張と言えば、夕張メロンが有名ですが、大自然や炭鉱時代から培ってきた歴史、文化があります。夕張が活力を取り戻すには、夕張の資源を活用して、新しい産業や事業を創生し、雇用を拡大してゆく起業家の存在が不可欠です。

IT社会の到来によって、境目のないデジタル大陸が生まれました。すべてのものがインターネットにつながり、情報の蓄積や活用により、何処にいても仕事ができる時代です。

一人の起業家の誕生が、その地域を担う事業となって、未来を変えることがあります。
夕張の地に、起業家が誕生し、新たな街を創る地方創生のデファクトスタンダードモデルになることに、微力ながら協力してゆきたいと思います。

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