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コラム

第25回

「経営者のわくわく」

「北條さんのページは、褒めてばかりですね」と言われて気がつきました。

これだけ、多くの経営者と出会っていれば、気分の悪い思いをさせられた経験も沢山あります。心根の寂しい人は、どんな所にでもいらっしゃる。でもそんな誹謗中傷を匿名で書くような、寂しい人間ではないし、そもそも、この私に、人様を批判できる資格はありません。本当に、素敵だと思う一面をみて感動をするからこそ、賞賛のページになるのです。

代表取締役という人は、何をする人かよくご存知だとも思いますが、一言で言えば、会社の経営(決定事項)について全責任を負う人の事です。事と次第で重責役員も連帯責任を負いますが、代表取締役には、逃げ場はありません。というより、全てにおいて決裁権があるのです。

株主から引導を渡されなければ、その権限は継続します、だから責任も重いのです。なにしろ船の行き場所を、具体的に決める舵取りですから。だから、孤独に決まっています。沢山の船頭がいると、船はいつまでも目的地につきません。

「社長になったら不満はなくなるけど、いつも不安だ」と言う方がいます。

本当にその通りです、いつも、経営者には、なにかしらの不安はつきまとうはずです。でも不安と感じる心のもとは、なんと「わくわく」なんです。「わくわく」する気持ちを、間違えて感じていくと不安になるのです。ちなみに、「どきどき」する気持ちが強すぎると怒りの感情を呼んでしまうそうです。

ようするに、なんでも、捉え方、考えようだと思いませんか?殺されるわけでもなく、だいたい、殺されるにしても、人は必ずいつか終わりが来るのでその時になって観念するしかありません。

先を怯えて生きても、わくわくして楽しいように考えても同じ時間です。困った時は、解決する為の新しい方法を、仲間と考えるいい時間にすればいい。仲間でわからなければ、師匠を探してみればいい。師匠がみつからなければ、いい本を探してみればいい。いい本が見つからなければ、森や川や動物と話してみればいい。

人は、探そうとしたときに、話そうとしたときに、動いた時に、半分以上は問題解決しているものです。

会社を維持するのは大変です、命がけです、でも止めても命はなくなりません。会社が無くなった理由で命をなくすのは、自分の意思です。死ななければいいのです、そう考えると不安なんて、少なくなると思います。

これからも、毎日楽しく、あきらめないで、心を割って話せる人と時を過ごして、世の中に少しでも多くの貢献ができる、企業経営に本気の、本物の経営者の方が増えて欲しいと願っています。

DeNAの南場社長は、お会いした数は少なくとも、その都度、印象的な一言がある方です。ご存知の方は皆、同じ気持ちだと思うのですが、なにしろ、お茶目で、元気。類希なる優秀な頭脳の持ち主、そして美人、その上気立てがいい。天は、幾つもの才を一人に与えるものだと思う、女性です。

最初にお会いしたのは、6年くらい前、リクルートから独立される方のパーティー会場でした。メインが終わり、歓談に入る頃、列席者の方々に、御挨拶に周られた後、15分程で、素敵な笑顔を残して、消えていかれました。手際の良さと人柄に好感を持ちました。

次も、ある企業の上場パーティーで、その時は「あっ、こんにちは。ところで、その髪いつも結ってるの?」と聞かれたのです。私は、面倒なので髪を結んでウィッグをつけているのですが、皆思っても聞きません、でも南場さんは、ニコニコしながら、聞かれるのです。「かつらですよ」と答えると、「あぁかつらね、あっそうか、そうなんだ」と納得。

次に会社へお伺いした時は、「その、ブラウスね、そう、私も欲しかったのよねぇ」弊社で上場後の忙しい中、ご講演をお願いした時、会場をセットしていた女性に、「そのベルト、素敵、どこで買ったの?」と質問。いつも、奢りの無い、気さくな性格なのです。
強くて、可愛い人という感じですね。

南場さんの活躍ぶりはいうまでもなく、沢山のメディアが取り上げているので、功績も、実績も多くの方の知る所ですが、時価総額1,500億円の立派な企業になるまでの道のりは順調ではありませんでした。

安定したエリート街道から一転、起業家となり、多くの投資家から、とても個人では背負えない額の資金を集めたにも拘わらず、赤字を続けて先ゆき不安が続きました。それでもあきらめずに戦い抜き、モバイルという新しい分野にチャレンジした事で、どん底から這い上がったのです。

あの華奢な体のどこにそんなパワーがあるのかと思います。でも、コンサルタント時代から、その強靭なパワーの片鱗はあったようです。

「モバイルで、私もオークションに参加してます、若い子から、絵文字メールで来るので負けずにギャル語で、打ってます。」と自然体で、でもしっかりと自社のメリットや、流石プロと思える事業計画を話される彼女は、恐らく、学歴も国籍も年代も性別もすべて超えた、人間同士のつきあいができる方なのだと思います。だから、どんな時も応援者がつき、社員が支え、今日の成功があるのでしょう。

そして、なにより、不安な気持ちを「わくわく」にして、貫いた結果だと思います。また、褒めてしまいました。

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