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コラム

第70回

「トレジャー」

「There are treasure among the usedproducts, If you think this is lie, you’d better go there and check out.」

いわゆる中古。理由はあると思うが、使用された車、自転車、家電、家具、生活雑貨、衣料品、装身具等、新品同然の高価な物であっても、持ち主にとっては不用な物をいう。そんな不遇な物品を引き取って、商品として立派に再生させるリサイクル、リユース業が成長し続けている。

30年程前までは、中古品に対する偏見というのがあったように記憶しているが、今では嘘のように珍重されているのだから、時代の流れというのは、あっさりと価値観を変えるものだ。

洋服にいたっては、綻びがあり、擦り剥けているシャツやジーンズが、予想外に高額な物もある。着こなす勇気もセンスも無いが、これも一つのお洒落だと認識している。

また、珍しい中古家具類は、むしろ壊れた状態にしておいたほうが、自分なりに補正、補修が出来るというので個性派には受けがいいらしい。物によっては、本来の姿でないものに、価値があるのだ。

高度成長の勢いに乗っていた頃は、家電や車や便利用品を次々と買い替え、デパートの特選品売場でお買い物をする事が、幸せスタイルのように感じていた。その甲斐もあってか、今や、家庭内に必要と思われる物は、大抵揃っているのではないだろうか。

ところが、1世帯あたりの所得が年々下降をたどっているにもかかわらず、相変わらず家具も家電も新しい物から売れている。新しいという事への執着は永久に変らないようだ。

一方、新品では無いが、上質な物を格安で求める事ができるのが、リサイクル、リユース店の利点である。かくいう私も、リサイクルの価値を感じたのは、15年ほど前。

知人から譲り受けたカフェバーの店舗用のテーブルや装飾品を、いくつかのお店を物色した結果、足立区のリサイクル店舗で購入する事にした。賑やかな色彩の倉庫を活用した店舗だったが、当事のリサイクル屋さんとは大きくイメージが違い、商品が綺麗に陳列され、値札もついていて、若い店員さんが、親切な接客をしてくれたのが決め手になった。

中古の家具に、多少の戸惑いもあったが、お店に置いた瞬間、いい雰囲気を醸し出してくれたので、満足度は大きく、中古品に対しての見方を変える事ができた。

そして、その時の感じの良い若者が、トレジャーファクトリーの野坂社長である。15年も前の事なので、家具、雑貨中心のリサイクルビジネスに対しての世間の目は厳しかったように思うが、トレジャーの若いスタッフ達は、楽しそうに働いていたのを思い出す。

そして、その若者集団は、確実に売上げを伸ばし、ついに上場企業となった。

先行き不安なご時勢を反映している冷え切った株式市場の中でも、リサイクルビジネスの新鋭として堂々と上場した。IPOバブル時代と違い、基準も審査も厳しさを増している中での上場は大変な事だったとお察しする。

ましてや、若くして起業し、古い慣習が残るビジネスにチャレンジして、上場企業になるまでには、苦労の連続だったはずだが、野坂社長は、実直な方なので、諸先輩方も親身になって応援して下さったはずだ。

上場準備に入られる寸前だったと記憶しているが、一人で考え事をされに入ったお店で、偶然居合わせた吉井の姿が眼に入り、直ぐに声をかけてこられた。なんでも、判断する材料が乏しく情報が必要だったとの事で、その場で用件と打ち合わせの日程を確認し合った。機を見て敏な方だと思った。

考える、聴く、判断する、動く、聴く、考える、判断する、動く、の繰り返し、一生懸命、考えて、考えて、確認して、決断して。だから、今日がある。それでも、思うように事が運ぶとは限らないのだが、あきらめずにいるので今がある。

不用な物を宝物に変えて、宝物を製造する工場だからトレジャーファクトリーなのだそうだが、今では本当にプロが驚く、貴重な品物が買い取り商品の中に混入しているらしい。目利きを自負する方は是非物色に行かれて、お宝を探しあてて頂きたいと思っている。

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