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コラム

第63回

「ターンアラウンド」

「企業再生」が、時代のキーワードとなってきた。組織を変革再生するには、重要な要素はリーダーである。企業が深刻な経営危機に陥った際、「ターンアラウンド(再建請負人)」として、経営を立て直すプロ経営者に、注目が集まっている。

例えば、ナビスコ、IBMを復活させたルイス・ガースナー、日産のカルロス・ゴーン、国内では、日本電産の永守重信さんは、その道の第一人者といわれている。

過日、永守さんにお会いした際、22社の企業再建に剛腕を発揮した秘訣を尋ねた。「再建の成否、3年が目安」であるとの話から、これまでの企業買収し、再建してきた経験から「第一に、誰が再生に当たるか。日本にも経営のプロはいるが、企業再生は別物。強風下で飛行機を操縦するようなもの。並外れたエネルギーと能力が必要だ」

「買収した会社の個人筆頭株主になり、失敗すればすべてを失う覚悟で再建に打ち込んでいる。誇りや金銭的な動機だけではなく、再建への使命感を持てば成功する」また、「すでに集中治療室に入っていて、ひん死の状態では再生など無理。売り上げ不振や新製品の欠如、海外進出の後れなどいくつも病状を抱えていてはどんな名医でも治療できない。

債務の削減や売り上げ増、黒字化など三年程度でメドがつく企業でなければやらない」「私は買収するかどうかを短時間で判断するが、目利きの最大のポイントは技術力。陳腐化せず今後の事業に生きる技術を持っているかどうかを見極める。社員が怠けて働かないといった問題は一、二年で解決できるが、技術力を蓄積するには十年はかかる」「不振企業の社員は給料分も働いていない。私は買収した企業の社員にハードワークを求め『赤字は悪だ』と徹底的に意識を変える。

給料分だけ働くのは過重労働ではない。当初は抵抗もあるが、一、ニ年で損失を処理し業績が上向けば意識は必ず変わる。反面、「集中治療室に入った企業は,つぶした方がいい。懸命にやっている企業の足を引っ張るからだ。今はデフレの上に過当競争。オーバーサプライ(供給過剰)が続けば健全な企業も国際競争力を失う。」

「再生にはスピードが問われる。企業は生鮮食品のようなもの。得に今は腐り方が早い。立て直すなら早いほどいい」・・と歯切れの良い迫力溢れるトークに余韻が残った。

多くの経営者は、年功序列組織の中で、上から引き立てられ社長になった人がほとんどである。
そうした社長は前任の決定を覆すと、永年仕えた主君を否定し、裏切ることになる。だから、大胆な企業変革が出来ない。

「伝統の承継」だけでは、会社が立ち行かない。ターンアラウンド「再建のプロ経営者」が、今後益々注目を浴びるだろう。

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