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コラム

第71回

「経営者像」

経営者には、創業オーナー経営者と雇用されたサラリーマン経営者がいる。 創業オーナー経営者は、株式の多くを所有し、主要な意思決定を行なう。

一方、サラリーマン経営者は、資本と経営の分離により、自社株のシェアは所有せず、経営の意思決定を行なう専門経営者である。

創業経営者は、創業時から、何から何まですべて自分でやらざるを得ないので、結果的に会社の全機能に精通する。反面、サラリーマン経営者は、一部門の専門化された道を歩み、出世に価値をおいた調整型社長になるので、経営全般を知る機会が少ない。

また、創業者の姿を踏襲したクローン型経営スタイルになりがちである。経営者のミッションは、最終の意思決定にある。しかし、担当役員任せで全体の経営バランスが崩れ、不幸を招いてしまうケースが、後をたたない。

経営者が変わるということは、環境変化に対し、常に変化、進化しつづけるために交代することに意味や価値があるという認識が、足りないのかもしれない。

創業オーナー経営者の多くは、個人のお金によって会社を立ち上げ、その後、個人保証を銀行に求められ、個人と会社が一体となり、会社の痛みも喜びもすべて自己のものとなる。こういった創業経営者は、会社の現状の痛みや危機意識を誰よりも持ち、「不確実な明日に向かって今、何をなすべきか」を考え、自らの全存在を賭けた決断をする。

結果、これが戦略的意思決定の本質となる。「戦略的」とは、与えられた問題に対して解決を図る「戦術的」アプローチではなく、自ら問題を創り出し立ち向かうことに、その本質がある。

今から、45年前、「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」と、リクルートの創業者は社員に語りかけた。そして、今日、多くの企業家精神を持った人達が、自ら変化を求め、新たな可能性に果敢に挑戦している。彼等は、「会社とは、創るもの、創り上げていくもの」と語っている。

また、サラリーマン型社長として、今や誰しも認めるカルロス・ゴーン氏は、専門経営者の域を出た創業経営者シップを持ち実績を上げ、プロ経営となった。ゴーン氏は、コアバリューを明らかにし、明解なビジョンを描き明確な目標を設定し、解かり易い自分の言葉で話す。

常に競争相手よりも早く、環境に組織を適応させてゆく変革者である。変革は、創業マインドの不退転の覚悟で、前進することを、実践で示した。イノベーションの時代には、管理調整型サラリーマン経営者でない、創業精神を持った経営者が輝くだろう。

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