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コラム

第95回

「不退転の決意」

11月5日、国内初の男子プロバスケットリーグ「bjリーグ」が、東京、仙台、大阪で開幕した。
東京の有明コロシアム会場では、試合中DJが音楽を流し、MCはマイクを離さず、タイムアウトにはチアリーダーが登場し、観客と一体化したアメリカのNBAを彷彿させる華やかな開幕であった。

今から5年前、「ファンを喜ばせるバスケがしたい」と、元全日本監督から相談を受けた。日本にプロのバスケットリーグを創りたいとの夢溢れる事業構想の話に、心動かされた。

市場は500万人のバスケ愛好者人口を有し、世界では4億5千万人いるといわれており、アメリカのNBAを頂点に50ヶ国の国ですでにプロリーグが運営されている。しかし、日本でのプロ化には、様々な障害が予想され、難易度の高い事業構想なので、当社で支援すべきかの決断に迷った。

新たな事業を成功に導くには、市場を始め様々な要素が求められる。そして、その成功要因は、何よりもその事業開発を牽引する「人材(起業家)」にかかっている。私はインキュベーション支援に取り組む際、信頼できる起業家(アントレプレナー)がいないかぎり決断はしない。

多くの企業で、企業内新規事業が成功しない要因として、暗黙の「社命」のような形で事業推進者に押し付けた結果、その人材にも、その家族にとっても、そしてその企業にとって決して良い結果をもたらさないケースを何度も見てきた。

新規事業に取り組むということは、そのリーダーに「不退転の決意」が求められ、とりあえず取り組んでみて、小さな困難に直面しただけで、駄目でしたでは済まされない。

己の人生と命を賭ける、「覚悟」と「気概」がなければ、新事業開発は成功しない。新しい事業は、計画通りいかなく、何が起こるか解からないハプニングの連続が、新規事業開発だ。だから、投資を含めたインキュベーション支援決断は、起業家に賭けることが最大の基準となる。

バスケットリーグを立ち上げる前に、全日本監督の河内さんと、二人でじっくり話す機会があった。
「私は、全てを失ってもやりたい」と静かな語り口で、決意に満ちた言葉を聴いた。プロリーグは、成功すると感じた瞬間であった。

その後、日本協会JBLから、離れての立ち上げとなり、様々な問題解決の連続であったが、11月5日、東京、仙台、大阪で日本初のリーグが、華々しく開幕した。

新規事業の成功の大きな要素は、誰がやるか、そして、そこに誰が集うかにある。そして、社会の役に立つ事業であれば、夢は叶う。日本のスポーツエンターティメントビジネスが、幕開けになればと願っている。

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