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コラム

第106回

「M&A」

ここ数年、国内の成熟市場や、事業承継によるM&Aが加速している。
企業の合併、買収件数は、一昨年2,200件、昨年2,700件となり、2005年日本で費やされた資金は10兆円を超え、2006年において世界のM&A数は、28,000件となり、その総額はなんと400兆を上回り過去最高と発表された。

企業経営の手段として、TOB、MBO、M&Aは、確実に根付き始めている。そして、ここ最近、IT・通信系企業群から、外食・食品・流通系の企業群へと拡がり、ジョイントの動きも活発化してきているように思える。

2年前、この変化にいち早く気づいた元ユニゾンキャピタル代表の佐山氏が設立したM&Aアドバイザリー会社のGCAは、10月6日マザーズに上場し、今後の成長性に注目が集まり一千億の時価総額が話題となった。

過日、焼肉チェーンの牛角ブランドで急成長したレックスHDは、わずか十年で、1,480店の外食巨大チェーンに成長し、コンビニエンスストアam/pm、スーパー成城石井を買収し、急拡大をした結果、連結最終赤字に陥った。

そして、外食市場の成長が鈍化したことや株価低迷に危機感を強め、投資会社のアドバンテッジパートナーズに協力を求め、経営陣によるMBOに踏み切り、非公開企業体制によって、競争力を取り戻そうと新たなあり方を求めた。 

一方、明星食品と日清食品、キリンとメルシャン、伊藤園とタリーズコーヒー、コナカとフタタ・・といった同業界のブランド企業同士が、大型総合化に向け、手を組む動きが報道を賑わしている。

それぞれの企業にとって、生き残りを懸けた経営改革に踏み切らざるを得ない事情が背景にある。

その一つは、市場成熟化の中で、競争激化に向き合った戦略的M&Aと、一つの事業ドメインに止まらず(多くの場合、気が散っているか、得意分野を持たない経営者による)必然性の見えない投資によって自らを追い込んでしまい、他社の力を求めるケースがある。

安易な成長戦略は、必ず行き詰まる。市場が成熟し、これ以上拡大しないならば、「成長しない戦略」として、メリーチョコレートや虎屋の羊羹のように、「良い個客と永いお付き合い」をするビジネスモデルを追及し、脈々と存続する強烈なブランドを創り、存続してゆく生き方がある。

私は、これからの成熟した日本社会の未来像は、二極化へのスピードが速まり、大型化総合化して、業界で圧倒的なNo.1企業とその他2、3社が寡占し、その一方で、小型特化した企業、地域に根ざした企業、ニッチな専門分野に特化した企業が活躍する流れになってくると捉えている。

大型化総合化を目指す大企業の変貌は、これからの日本の企業社会を変えるインパクトを与え、企業はこれまでの延長にない再編時代を迎えようとしている。今後、一つの事業ドメインに集中し極めてゆく唯一無二の企業が、圧倒的強さを持ち、勝ち残る企業の鉄則になるだろう。

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