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コラム

第227回

「盛田昭夫さんのDNA」

GWに、風光明媚な知多半島中央にある愛知県常滑市小鈴谷を訪ねました。
この地は、世界企業ソニーを井深大と共に育て上げた創業者盛田昭夫の生家の地です。

生前盛田さんに、銀座「ねのひ」というお店でお会いした時、造り酒屋の15代目の跡取りだと知りました。今も350年の歴史を持つ蔵元「盛田株式会社」として存続しています。

盛田さんは当主を継ぐと期待されていましたが、家業を弟に委ね井深大と共に東京通信工業(現ソニー)を興しました。ソニー創業期の資金や社員の給与は、実家の酒屋から経済的な支援を受けてのスタートだったといわれています。
常滑の盛田味の館で、芳醇な酒の「ねのひ」を飲みながら、「自分の会社の製品は、自分の手で売る」という盛田家の家訓を知りました。

ソニーが小さな会社の頃、アメリカの大手時計会社から「SONYでは無名で売れっこない。わが社のブランドで売らせてくれるのなら、10万台のトランジスタラジオを注文する」と、市場調査と商談のため渡米中の盛田さん(当時専務)に申し出がありました。喉から手が出そうな商売であったにもかかわらず、「SONYのブランドを付けなければ意味がない」として断り、「自分達のブランドは、自ら売る」という決断が、ソニーの世界企業としての出発点だといわれています。この決断は、盛田酒造のDNAが15代目盛田さんに受け継がれていたのだと思います。

世界の人々のライフスタイルを変えたアップルの創業者スティーブ・ジョブズは、盛田昭夫さんに憧れ大きな影響を受けた人物としても有名です。

ジョブズは、生前に「ソニーの盛田さんは、数多くの素晴らしい製品を私たちに残してくれた。特に、私の高校時代にリリースされたWALKMANに感動した。30年以上前、初めてヘッドフォンを装着したときの事を思い出すと、当時のワクワク感を思い出す。音楽を町に連れ出すというコンセプトによって、見える景色が一変した。」と語っています。

WALKMANから「1,000曲をポケットに」をコンセプトにしたiPodが生まれ、iPhoneへと進化しました。

今、これまでにない情報革命によって、産業に異変が起こっています。
盛田さんからジョブズへDNAが継承され、社会を根底から変える革新的メガベンチャーのアップルが誕生しました。
メガベンチャー勃興の背景には時代を切り拓いた先人達の存在があり、そのDNAが途切れることなく続いていくことを願っています。

追伸
盛田さんの名言を紹介します。

アイデアの良い人は世の中にたくさんいるが、
良いと思ったアイデアを実行する勇気のある人は少ない。
自分を開発し、発展していくためには、
他人と同じ考え、同じ行動をしてはいけない。
人は誰でも種々様々な能力を持っているものなのに、
どんな優れた能力があるかを知らずにいる場合が多い。
座っていてボタモチを待っていてはダメなので、
自力を発揮してボタモチを取りに行く欲がないような人間に、用はない

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