column

コラム

第5回

「藤田 田さん」

お会いできたのは、ほんの数回でしたが、その度にいろいろな感動を頂きました。中でも、特に印象に残っているのは、お台場のフードコートでの藤田さんの後姿です。

何故、藤田さんとお台場に?というと、弊社が支援しているファストフードのビジネスに対して、大変御興味を持たれたからです。

藤田さんは、次から次へと夢を持たれて実行されてきた方なので、マクドナルドのビジネスの最前線を引かれても、また、次の事を夢見ていらしたのだと思います。

秘書の方と吉井と楽しそうに、歩いて見えられたのですが、椅子に座られるより先に、気になる店舗の視察から、じっくり1件、1件、ゆっくりと一周され、そして試食会!セットで490円という価格に眼を細めて、「値段がいいね、そうこれでなくては駄目だ、日本の食事は高すぎる、もっともっと安くて旨い物が、できるんや。だいたい国の規制が・・・・」キチンと残さず、召し上がりながら、いろいろな仕入れ方法や、販売の戦略を語られた。

そうか、この方は、多くの人に、よりおいしく、沢山食べて貰いたいと本気で考えた。こんなに、廃棄する食品が増える程、食べ物があふれる国になれると思ってなかったのかもしれない。終戦のドタバタを生き抜き、ここまで、成功していく過程で、様々な事があったのに違いないのです、お腹一杯食べれずにいる人をどれだけ見て来たか。

そして、どれだけの会社、どれだけの国の規制と戦ってこられた事か。それでも、ずーっと、この米国の食べ物を、日本の人においしく安く、食べてもらう為にあらゆる努力をされてきたのだと思います。その事を髣髴させるエピソードと共に、いろいろなアイディアや、商品への評価を頂きました。

お見送りをする際に、改めて少し足の御不自由を感じました。「もうよう、歩かんようになったんで、ばあさんと店を周れなくなったらからやめた!」とおっしゃいました。

最後にじっくりと、マクドナルドのカウンターからサイン看板をみられて、気がつかれた事を熱心に吉井に説明されながら、ゆっくりとゆっくりと帰っていかれました。

その姿に胸が熱くなりつつ、どんな時でも前向きに小さな事から課題の本質を見つけて解決していこうとする、ひたむきな姿に「経営者の真髄」をみた気が致しました。

吉井は、気の置けない仲だったから言えたのかもしれませんが、数年前、これからのマクドナルドの方向性や経営の考え方に対してかなり痛烈な意見を申し上げるという緊張感漂う場面に遭遇してしまいました、しかし、藤田さんは、言葉を荒げることもなく、年下の吉井の言う事を噛み締めて聞いてくださり、むしろ、いろいろご相談を頂くようになりました。

その時も、相手の気持ちを汲み取り、自分の体裁より、本気で会社を想う、本物の経営者だと思ったのですが、またもや、お台場のフードコートで本物を見せて頂いた気がしました。

その姿をみて数ヵ月後、聞きたくなかった訃報が届きました。とても残念ですが、藤田さんの側近だった方々の心に、しっかりと藤田さんがいらっしゃるのを感じると、大物は、血をつくるのだと実感します。

このDNAを受け継いだ、日本マクドナルド大学卒業生の方々に、更なる御活躍を期待しつつ、一人でも多くの起業家に、藤田さんのように、どんな事からも、本質を見抜く、本物の経営者になって頂きたいと思います。

コラムを毎月メルマガでご購読