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コラム

第77回

「恩返し」

恩と言う字は因(もと)の心と書く。因は、布団の上で赤ちゃんが大の字に寝ている姿を表していて、守るものがいてこその、今があるという自覚をし、すべてに感謝する心が「恩」だと知った。

恩返しとは、その感謝の気持ちを、モノやお金や行動で表すことだが、直接恩を受けた人に限って返すということではなく、自分と同じような思いをしている方に対して、受けた恩と同じくらいの行為をすることも恩返しになるそうだ。

また、御恩と奉公というところでは、当時、武士間の主従関係は、主人・従者が相互に利益を与え合う関係で成り立っており、主人に対して従者が与える利益が奉公で、主人が従者に与える利益を御恩といった。

主従関係における御恩とは、慈しまれることではなく、御恩に報いるというのは、受けた利益に対する奉公であったわけだ。

現代でいえば、給与が御恩であり、奉公が勤労という事になるのだろうか。いつの時代も、司るものと司られるものは利害関係にあるということは変わらない。今年は、昨年に増して、この御恩と奉公のバランスも崩れ、辛い話が蔓延していた。

不景気な話ばかりで、景気の良い話は、ほんの一握りの特異な経営者の話題であった事が寂しい限りだが、その有能な経営者の方々も、一人で成長したわけではないと思うので、その因となった人、社員、取引先企業、広くは祖国、国民に対して恩返しをして頂けるのではないかと期待している。これまでの名を残された経営者がそうであったように。

一方、日本はどうしようもないと嘆くばかりでないという方々もいらっしゃる。そういう方は大抵、戦後の日本の貧困を乗り越え、波瀾万丈な人生を生き抜いた各界の重鎮に多い。死の恐怖に比べれば、不景気等なにが怖いかという事なのだろう。

最近その重鎮のお一人から元気になるお話を伺った。

今、日本は蛹(さなぎ)の状態なので、中身がどろどろだそうだ。蛹というのは、幼虫として這っていた虫から空を飛べる蝶になるためには、半端な修正ではないので、一度壊してどろどろの状態になるために動けないのだそうだ。

綺麗な蝶になって空を駆け巡る前、蛹の中では大変革が起こっているわけだ。しかも蛹は、外見も醜い状態であるので、未来を予測している人にしか価値を認めてもらえない。まさに、今の日本のように、気の毒な状態なのである。

なので「今の日本は、実は一生懸命内部で変革している最中で、近い将来、見事な蝶になって、また、日本ブランドを復活させる準備をしているのだ!!」という説であった。

確かに、恩を知る心を持って周りに感謝を忘れずに、信頼できる仲間と仕事をしていく人が増えれば、ドロドロな状態からでも、明るい未来に向かって日本は変革していく。そして、まずは、日本が信頼を取り戻せれば、世界で困っている人々も支援することができるのではないだろうか。

あるいは、良き見本となって、世界中の人々の交流を情報技術の進歩だけではない、大和魂の精神でつなげていくこともできるかもしれない。

今年最後の月、弊社のインキュベーションルームに、元気な起業家が参加した。ルームには、BOSSを慕い仲間を大切にする起業集団がいる。朝から夜中まで営業活動を率先して行い、互いに切磋琢磨しながら日々成長している若者集団もいる。

地域の名産品を広める為に拠点をおく企業がいる。また、最近では輝く未来を感じる企業内起業家や、未来の成功を信じる起業家予備軍が相談にみえる数が増えてきた。そして新規企業に参加したいという若者の声が聞こえるようになってきた。

様々なテーマの会合に参加する度、若手経営者との名刺交換が昨年よりも確実に増えてきた。

身近なところでも、目に見えて変化は起きてきているのだ。

今こそ、恩返しの精神で多くの経験者が未来ある方々を支援していくべきなのではないかと思っている。その繰り返しが大きな変革の力となり、日本が蛹から、世界を飛び回る蝶に変身する事を促せるのだから。

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