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コラム

第80回

「正義の味方」

幼い頃、正義の味方と聞くと、頼もしく、格好よく、潔く、どんな時も無償の愛で助けてくれるというイメージを持っていた。多くの純真な子供たちは同じだったはずだ。

ところが、人生経験をしぶとく積んでいくと、そんな都合のいい正義の味方等いないと知る。結局、自分を助けるのは、自分。自分の心に正義の味方を住まわせるしかない。

正義といえば、ハーバードのサンデル教授の白熱教室は、面白い。そちらを助ければ、こちらが助からない、さて、あなたならどうするか?という深層に迫る質問内容が、次から次へ出てくる。そして、Aさんの意見はこうだが、違う人は?と、意見を求め、議論を戦わせ、妥協点をそれぞれの中に気付かせてゆく。

講義を見ていて、著名な漫画のせりふで、「正義の反対はもう一つの正義」といっていたのを思い出し、その言葉の深さを改めて感じた。それは、正義というのは、権利の意味を持つという事を知ったからだ。

なるほど、権利ならば、一人一人それぞれにある。だから正義の反対は悪ではない。反対の正義(不正義)というわけだ。そもそも、悪の反対は、善であった。

では善とはなにか?それは、人の尊厳を脅かす事のないことだと私は思っている。つまり、他人の命や生活を脅かさない事、それは無視ではなく、むしろ積極的に他人の命や生活を守るための行為を行う事が「善」と呼べるものだと思う。

今回の有事では、各企業の経営者の正義が明解になった。

震災即日、社員に費用を渡して、退避を命じた企業。個人資産を現金化し、社員の給料の当分の保全をした社長。不眠不休で救援物資を運ぶ社長。または、自分も被災しているのに地元民に物資を支援する社長。

そして、苦しくとも、多くの民を助ける為に、あえて少数の犠牲を強いることも、その企業の正義であるし、会社の存続の為に社員を解雇するのもその会社の正義なのだ。評価や批判をしたいわけではなく、正義とは、それぞれにある事がとても良く理解できた。

日本は、世界の中でも、美しい景色を持ち、知識と文化に満ちた豊かな国だと思っている。日本を復活させるのは、大手弱小関係なく、日本全国の経営者の手腕にかかっている。

問題は、何も解決していない。これからが、本当の正念場になる。もちろん、多くの新たなチャンスも訪れる。だからこそ、共通の認識で対応策を持ち、社内を統一出来ているところは強いはずだ。この有事を機に、それぞれの経営の正義を貫いて、日本が世界の憧れの国となるべく活躍してほしい。

私も、心の中の「私の正義」を味方につけて、日本のこれからに、少しでも役立ちたいと思っている。

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