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コラム

第120回

「信心」

都内を散策していると、いたるところでお稲荷さんにお目にかかる。初詣でも有名なところから、商店街や、ビルの屋上や、邸宅の敷地内にまでいらっしゃる。

なんで?と気になった。

現在は神使であった御狐様をお祀りしているところもあるようだが、稲荷神社とは違う。
稲荷神社の祭神は、天照大御神の弟君であらせられる須佐之男(スサノオ)の命からお生まれになった、穀物(稲)の神「宇迦之御魂(ウカノミタマ)の神」である。

また、植物の神である大気津比売神(オオケツヒメノ)神も祀られている。その後、仏教とのつながりで、ダッキーニ(茶枳尼天)と習合されてもいる。

で、東京に多い理由は、もともと農村だった上に、参勤交代の影響が強かった。各地の大名が故郷の繁栄を願って江戸の屋敷内に祀ったからだ。

そして、都市として発展していくにつれ、進出してきた商人達が、商売の神と進化した稲荷神を敷地内に祀ったことも、現在の場所をみれば頷ける。五穀豊穣、商売繁盛。そりゃ民の願いです。

しかし、本当は、その神様や仏様を信じている自分を信じているのではないだろうか。願いが叶わなくても文句を言わないのは、結果を出すのは自分だとわかっているからだ。信心とは自分と向き合って自分の意志で判断できる基準を持つ事だと思う。

ただ、その支えの一つに、縁のあった神様や仏様への信仰心も大事な要素かもしれない。著名な方々に信仰心が厚い方が多いのは、偶然ではない気がしている。

とにもかくにも、一度の人生、自分の意志で覚悟を決めたら楽になる(はず)。人の強さは志の強さであると思う。性別や年齢や経験に関係なく、自分の芯が通っている人は強く、美しい。そして、なによりも人生が楽しそうなのである。どのような困難や事情があろうが、自分の夢や志に支えられて生きている人は輝いている。

では、特に夢や志を持てていない場合でも、今の状況より良くなりたいと思われたら、まずは、ご近所か、ご縁のある神社仏閣へ参拝にいかれることをお勧めする。できれば、しきたりに沿って、その意味を理解して参拝して欲しい。

そうすると、具体的に、自分が何がしたいか、何を望んでいるかを問いかけてみる事ができるのである。なにしろ、自分にしか答えがないから。

それにしても、東京がこんなに発展した背景に、お稲荷さんを祀る商売人やお武家さま達の貢献があった事は事実ではないだろうか。今後は、お稲荷さんに遭遇したら、当時の方々を忍びつつ感謝をしたいと思っている。

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