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コラム

第9回

「ベンチャー成長手段“TLO”」

アメリカでは、大学と民間企業のネットが強く、TLO(技術移転機関)の仕組みによってこれまで多くのベンチャー企業が80年代以降、生まれている。

スタンフォード大学の学生だったジェリー・ヤンとデビッド・ファイロは大学で開発したインターネット検索サイトを民間の企業とコラボレーションし、ヤフーを創業。ビルゲイツもハーバード大学時代にBASICの開発に没頭し、ポール・アレンと二人で今日のマイクロソフトを創業。

サンマイクロシステムズのSunは太陽とよく間違われるらしいが、スタンフォードユニバーシティの略だが、産学協同で会社を設立。イリノイ大学のマーク・アンドリーセンは「ブラウザ」というネット検索閲覧ソフトを、ベンチャーキャピタリストと共に、ネットスケープを起業した。

米国を代表するベンチャー企業の多くは、大学で生まれた技術をもとに起業している。TLOは大学全体の研究成果と企業のニーズを結び、新しい競争力と生命力のある商品を創り出している。

企業の自社内における研究開発は時間・コスト・社内ルール・風土といった限られた制約の中で行うだけに、新しい発見や技術を創造されるケースは極めて少ない。

一方、大学の研究者や学生にとっては、自分の興味のあるテーマを恵まれた環境の中で開発することができる。

企業のニーズに向き合った開発であればなおのこと、新規事業創出の原動力となり、実業につながる大きなパワーとなる。特許はベンチャー企業にとって競争社会の中で力強く生き抜く大きなファクターである。米国のベンチャーに共通している強みは、特許を所有していることだ。

現在日本においても24万~25万人の研究者が大学におり、研究資金の20%が使われている。残念ながらこのリソースがこれまで起業に使われることなく成果に結びつくことは少なかった。

今後、日本でも産学共同技術を企業に移転するTLOによって、新事業を創出してゆく日本のベンチャー企業が生まれてくることを期待したい。

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