column

コラム

第16回

「“アライアンス”はベンチャー成長の条件」

このところ、突然、スーパースターのようなベンチャー企業が誕生し話題となることが多い。その背景に、共通の企業戦略がある。その正体は、「アライアンス」(alliance)だ。

もともと軍事同盟という政治的な意味で使われてきた言葉でだ。しかし、今日では「事業の提携」、「企業間の同盟」といった、相互補完的な企業同志、特にベンチャー企業同士のつながりを意味する。

企業が、それぞれの強みを生かして、弱いところは、相互補完し合い、限られた経営資源(人・技術・金・情報)を生かして、互いの目的を実現する同盟である。

合併でもなく、下請けでもない、単なる事業提携とも違う、小規模な企業が、大企業とのボーダレスの時代の中で、力強く優位に成長し続けてゆくには、アメリカのベンチャー企業のように、多くの企業とのアライアンスを組むことにある。

最近の実例で、新潟の金型メーカーのT社。この企業は、大手自動車メーカー指定の金型工場である。永年、自動車メーカーのボディや、ミッションの金型を作る工場として、存続して来た会社である。しかし、今日の車販売状況による影響を受け、全体の工場の60%位しか、稼動していない状況下に昨年まであった。

手だての一つとして、インターネットを通じ、会社の紹介をしたところ、栃木のベンチャーメーカーから、「自社で○月までに、納品をしなければならない仕事があるのだが、共にやってもらえないか。」との連絡が入った。T社の技術、生産力に目をつけ、まったくドメインの違う企業同志ではあるが、同盟を結び、結果、これまでにない、安定した事業を共創するに至っている。

こういった、これまでに見受けられることのなかった様々な企業間のつながりは、同業種だけに留まることなく、異業種間の企業同志を結ぶ、多くのケースが日本にも生まれつつある。

アライアンスは、一過性の戦略ではなく、技術革新により、スピード経営が問われる今日の状況下では、特に重要な戦略となってきた。

なぜなら、どんな大手企業でも、数多くの分野での研究開発や、多地点をカバーする形で、生産、マーケティング、販売を、同時に行う事は、いくら人材や資金があっても出来ないからだ。

この傾向は、ソフト化に進化すればするほど、助長される。シェア競争でない、新たなバリュー(価値)を創出してゆく知識企業こそが、今後発展してゆくだろう。

実践から生み出されたベンチャーの生きぬいてゆく方法は、信頼できる創造力を持った、企業とダイレクトにつながる「アライアンス」にある。

コラムを毎月メルマガでご購読