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コラム

第35回

「予兆をとらえた大川功さん」

日本を代表するベンチャー経営魂を持ったCSK創業者の大川さんが、3月16日亡くなられた。

最初にお目にかかったのは16年前、人材採用の件でお会いして以来、多くのことを教えていただいた。「事業には、必ず予兆が訪れる。その予兆を逃さずにとらえ、これを命がけで事業化する人に対して、天は時流という恩恵を与え、そして使命という責任を負わせる。」ということをモットーとしておられた。

いつもお会いするたびに、濁声で大阪弁混じりの迫力溢れる語りによって、持論の経営観や明快なビジョンを伝えて頂いた。「信念を持って未来価値の創造に経営資源を投資し、夢を実現するのが経営だ。僕の経営観は人生観であり、事業は一代限り」「運命は自分で切り開け、運のいい人についていけ」「価値とは目に見えないもの、無形価値をもつことが大切だ」「人がすべて。経営はそれに尽きる」・・経営哲学、ものの考え方、人材感、マネージメントと、経験を通じての思いが刻み込まれた大川語録は、強く印象に残り、私の起業マインドに刺激と影響を与え大きなエネルギーを頂いてきたように思う。

例年年明けに、CSKグループの賀詞交換会が行われる。大川さんの「未来のありか」の話を伺うことを楽しみにしていたが、今年は欠席された。

頂いた冊子の中で、「21世紀を迎え、あくなき挑戦をしてゆきたい。どんな事があってもSEGAは、利益を出すまで徹底してやってゆく。今年も挑戦だ。」と紙面を通じて語りかけておられた。大川さんは、最後まで現役のベンチャー魂を持ち続けた挑戦者だった。

今から思えば、大川さんに最後にお会いした赤坂のオフィスで帰る際、ふかぶかと頭を下げ見送ってくれた姿が瞼の裏に残っている。お別れのあいさつだった様に思う。

人との出逢いが、時には人生を根底から変えることがある。大川さんと出会い、学んだことを一人でも多くの起業家達に伝えていきたい。

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