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コラム

第51回

「自分評価の目」

過日、知人の結婚披露宴で、居合わせた、元金融機関メンバーの輪の中で、「ダイエーへの金融支援をするのに創業者中内さんはすべての私財を差し出し、球団株も含め」・・との話題になった。

中内さんとは、前職の会社で幾度かの新規事業ミーティングを通じ、事業理念、ビジョンに触れる機会があった。メーカーから価格決定権を奪い、流通革命を展開し小売業のリーダーとして生活者に多くの利益をもたらした歴史を創った起業人のオーラを感じた。

中内さんの示したビジネスモデルは、40年間に渡り日本の流通業界を席巻し続け、この間金融機関に支払った金利は5兆をくだらないといわれている。

大変な利益を銀行にもたらしている。それを知りながらマスコミ国民世論や金融庁の論調を背に銀行陣は、戦後経済を支えた英雄にすべての私財を出せ!という論調で、多くの人が当たり前のように言っている。 

「本当にそうなのだろうか?」、私は疑問を感じた。口触りのいい国のセルフを鵜呑みにして、独自の見方が出来ない人達の社会になってしまったら、今後本当に志を持った中内さんのような起業家は、出てこないかも知れない。

三月決算を終え、企業の年度業績はますます明暗が分かれてきた。ついこの前、ユニクロがヨーカ堂の利益を抜き株価も5万6,000円をつけ話題になった。

しかし今では、2,000円まで落ち込んでしまっている。また、ここ2年~3年前に公開し華々しいデビューした「時代の寵児」と持て囃され一年後に「落ちた偶像」となっている企業がこのところあまりに多いことが気になる

次元の違う中内さんを「落ちた偶像でなく流通革命を推進した英雄」として評価されていいのではと思うのは、私だけではないと思う。

一方サクセス・ストーリーとして、セコム,トヨタ、キャノン、リコーそして電気メーカーの多くが苦戦している中で、栗田工業などの企業郡は、本当に長年にわたり安定して好調を維持している。

閉塞感漂うこの時代、本当の成果を上げ、社会貢献した事業を創ってきた事業家の先輩達や、今後時代をリードする元気な企業を、正当に評価する自分の目を持ちたいものである。

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