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コラム

第122回

 「リタイアメントコミュニティ」

なんでも先駆けるアメリカでは、1960年代から、リタイアしたシニアを対象とした施設が出来ていた。頑張って生きてきた証の余生を楽しみながら暮らせるという場所だ。

にしても、リタイアと言っても、セミリタイアもあるし、生涯現役を貫く方もいらっしゃるので、年代で決めるのはいささか疑問もあるが、一応は、どこの国でも人生を年で区切る事が自然なようで、日本でも還暦という節目をつけたりして、はい、今日からあなたはこっち側というシールを貼られるような日がある。

古代インドでは、四住期という思想があり、一区切り25年で100年を人生に見立てているという。そこでいうと、リタイア年齢は50歳~75歳の林住期(りんじゅうき)、その後は遊行期(ゆぎょうき)、寿命まで何年でも心豊かに過ごせる日々…と考えたい。

いずれにしろ、リタイア(引退)した人達は、次の人生を自分の為、自分がやりたいことの為に使ってもいいということで、セカンドライフなんてしゃれた言葉もある。

もちろん、家庭の事情もあるし、一家の長はそんなに簡単に自由になれる人は少ないが、いずれにしろ、一つの区切りや悟りを開かないといけない時期という意味でもある。

そんな中でも、ゆとりのある方々の為にあるのが、ホームでもなく、病院でもない、体も資産も安心、安全が確立された居場所の、米国のリタイアメントコミュニティであるようだ。

1960年代は、リクレーションが主体であったが、80年代から知的欲求や若者との交流を目的に、大学の敷地内や近隣に設置され、徐々に衰えてくる身体に適応する様々なサービスと仲間もいることで、孤独感の無い豊かで明るいコミュニティが出来ているらしい。

平均年齢は84歳で、寝たきり状態は2割に満たないという。いろいろな意味で興味深い。もちろん、ここは、それなりの富裕層でなければ参加できない。

それなりのサービスはそれなりの価格帯なのである。しかし、そこまでいかなくても、イギリス式のシェルタードハウスという、管理人が設置された集合住宅もあるし、住宅業界や不動産業界も、高齢者を意識した地域づくりに力を入れてくださり、頼もしい事である。

もっとも、知的欲求が強い、元気な体を持つシニアは、自分で自分の居心地のいい場所をあらゆる方法で構築していくのだと思うが、協力者がいた方がいいに決まっている。

近年は、これまでに長くお付き合い頂いている創業経営者や、数千億のマネージメントをされてきた経営陣の方々がどんどんリタイアされていくので寂しさもあるのだが、知恵と度胸で経営を推進し、あらゆる心配りをされてきたリーダーの方々だけあって、次なるステージでも、面白おかしく豊かな日々を格好よく過ごされている。

25歳から50歳までは、家住期というそうだが、ここでどれだけ仕事をするかでその後の過ごし方が決まるという。その前の0歳から25歳は学びの時期である。

25歳から50歳もしくは60歳までに、その後の生活をイメージして、思い切り仕事をして、林住期では素敵なリタイアメントライフを楽しんで頂きたい。考えてみたら、めちゃくちゃ頑張るのは、たったの25年なのである。

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