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コラム

第207回

「リクルート上場に想う」

10月16日、リクルートHDが東証一部に上場しました。
この日ニューヨーク株が続落し、その影響で日本の上場企業の株価も続落している中、公募価格を上回り、時価総額は2兆円を超える今年度最大の上場となりました。

私がリクルートにいた頃、江副さんに上場の意向を尋ねたことがあります。
「今の規模と株主構成で上場すると、大企業に買収される可能性があるよ。リクルートは情報産業なので、中立が担保されなければならないから上場はしない」と言っていました。

その後、江副さんが経営を離れ26年が経ち、デジタル情報革命によって経営環境は激変し、世界も日本も産業構造の転換期を迎えています。

1兆8,000億の借入を返却し終え、一兆円を超える売り上げ規模となったリクルートが成長してゆくには、人材、販促ドメインでグローバルNo.1を目指してゆくことが求められます。
スピード成長を実現してゆくには、M&A等のために巨額の資金が必要であり、非上場を維持してゆく理由がなくなり上場に至りました。

資源を持たない日本の、明治維新以降の目覚ましい成長と豊かさは、世界でも類を見ないケースだといわれています。渋沢栄一を始めとする起業家精神旺盛な多くのベンチャー企業が勃興し、今日の日本経済を築きました。

昭和11年生まれの起業家江副さんの功績は、日本の人々に自由に仕事を選ぶ機会を提供し、様々な選択ができる世界を創り日本の成長に貢献したことだと思います。
そして、リクルートのDNAと「自ら機会を創り出し、機会によって自らを変えよ」という起業家精神は、色あせることなく生き続け、様々な分野で活躍している起業家を誕生させた稀代の経営者でした。

残念なことに昨年の2月、江副さんは上場を見届けず亡くなってしまいました。
リクルートのDNAが国境を超えて、一人でも多くの人々がもっと自由に職業や機会を選べる世界が実現することを願ってやみません。

安比高原・江副さんの記念碑にて

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