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コラム

第68回

「お盆」

例年、お盆には祖先の墓参りに欠かさず行っている。子供の頃から、夜の墓参り提灯を持った人々が描く光の河を目にした時が、私にとってのお盆となる。

そして、墓参りの後、親族と顔を合わせると、枝豆と冷えたビールで話が盛り上がる。8月13日の夜、「経営者っていつも叱られてばかりで、かっこ悪い、叔父さんは何で経営者をやってるの?」と姪から訊ねられた。

TVの中で頭を下げ、うなだれている今日の経営者の姿は、確かに哀れをとどめ経営者が尊敬されない、若い子達から見るとかっこ悪い時代を迎えているのかもしれない。

こういった現状が、元気のない今日の日本の一因としたら、経営者は「ノブレスオブリ-ジュ」(逃げも隠れもしない責任能力)で立ち向かっていかねばならないと、改めて考えさせられた。そして、親族とのお盆での昔話に、気づいたことがある。会ったことのない祖先の方々が発したと思える「言葉や訓え」を、永い年月を隔てても父の言葉として今日まで大切に語り継がれ、先祖代々のDNAを感じる思いがした。

多くの成功をおさめた経営者と出会い、共通して感じることだが、自らの過去、体験、感じたこと、そして、自分の成功法則などを見事に明解な言葉で語る経営者が多い。

力をもった明解な言語は、瞬時にその経営者の経営感や人格、人間力を、人の心に響かせ魅了することがある。経営者は、「ビジョンの構築と理念の明確化」、「戦略的意思決定」、「執行管理」が、役割であるといわれている。

「不確実な明日に向かって、今何をなすべきか」を決断し、それを実現へ導くことがトップの仕事だ。しかし、それを伝える戦術アプローチや技術がなければ現場は動かない。

そして、その導線は、「言葉」にある。経営者が語る理念に裏付けられた言語は、自らのふつふつと内側から生み出される魂の叫びであり、自らの全存在を賭けた「決断」への「エネルギー」となり、現場の人の行動を促す。

言葉は時に、時空を超え、企業の生き様として、理念や物語になり、風土やスピリッツとして育ち、多くの人々の指針となって組織を動かしてゆく。

今年のお盆は、惑わされることなく生き抜いてきた先人達の「生きる叡知」が、生命を持った言葉となって継承されていることを改めて感じた。そして、忘れてはならない「祖先の先輩たちの訓え」を迎え火によって語りかけられた気がした。

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