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コラム

第99回

「相性」

昨年、158社の企業が上場を果たした。上場企業の顔ぶれは、多彩だが、共通していることがある。社員と経営陣が一体化したモチベーションの高い人間集団であり、採用に向けては、全社一丸となって対応していることだ。

最近、経営者から、「今、成長チャンスだがなかなかいい人が採用できない。採用してもすぐに辞めてしまう。採用コストが高くて、苦労している。」との相談を受けることが多い。

私は、「御社にとっていい人とは、どんな人材像なのか?そして、その求めている人材像が、わかり易い言語として全社で共有化されていますか?」と質問するようにしている。管理系、営業系、技術系なのか、年齢や性別、職種、スキル、これまでのキャリアは、履歴書を見れば誰でも理解できる。

しかし、その人の内面にある思いや、価値観・人生観は、データでは解らない。会社をリードしていく人を迎えるには、まず、経営者の理念に共感できるか、その会社に流れている風土や働き方に、しっくり馴染めるかが大切だ。

その為には、経営陣が、どんな会社を創りたいのか、数値的な売り上げや時価総額だけでなく、経営が最も大切にしている「こだわりソフト」を伝えること。

例えば、当社は、縁のあった人と生涯にわたって継続する付き合いをしてゆきたい!開放的な風土でチームで仕事をしている!といった具体的なことを入社前から、入社後も伝えるようにしている。

将来の会社の夢やビジネスモデル、待遇をはじめ、設備等表面だけをみて、勝手な想像をして入社してしまうと、入ってから、そこに流れる空気や価値観に違和感を覚えたり、働く先輩や経営陣人が、セクシーに輝いて見えなくなる。

昨今の採用環境は、バブル期を上回る売り手市場なので、企業はよく見せようと化粧を厚くしている傾向にある。採用とは、結婚する際に、互いに選び合う見合いの場なのだ。互いの根底からの理解と共感がなければ、離婚してしまうように、退職という別れになる。

企業の競争優位性は、一丸となったパワー溢れる社風を創れるかどうかにある。うわべでなく本音で集った集団の企業は、理念・風土・仕事観・イズムに共感した社員ひとり一人が、仲間たちを迎えるために、共有した言葉を発する。

「相性」は、想像を超えたモチベーションを生み、成長の原動力の「要」だ。 

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