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コラム

第107回

「自ら機会を創る決断」

新年新心

昨年のビジネス界は、市場成熟化の中で、生き残りをかけたM&A数2600件、そこに費やされた金額11兆、また、新興企業の株式公開134社と、これまでにない新旧交代の企業再編時代に突入した。そして、個人にいたっては、企業間での転職人材大異動の年だったように思える。

これからの企業の姿は、業界で圧倒的シェアNo.1企業と、狭域に根ざした唯一無二の企業群によって構成され、そこに向けての、自らのイノベーションが勝社の企業テーマとなってきた。

かつて、企業内新機軸イノベーションによって、成功に導いたホンダの創業者の本田さんが、人の役に立ちたいと日本中の自転車店主18,000人に、誰にでも乗れる「カブバイク」を作って売る「本物の決断」をした。今や、ホンダブランドは、全世界で見かける素晴らしい成功をとげた。

本物の決断が、企業に大きなパワーを与え、イノベーションへと繋がり、未来事業を育てていく。イノベーションを、自ら興した本田さんは、「何にフォーカスを当て、何が大切で、何をするのか」の決断を定めた。

そして、自らの決断を「信じ」て、顧客との接点にすべてを集中し、定めた事業ドメインの中で、ひたすら、オンリーワンを目指し、愚直にやり抜きイノベーションが生まれた。

一方、今から40年前、リクルートの創業者江副さんは、起業スピリッツのある人材を集め、「自ら機会を創りだし機会によって自らを変えよ」と、語りかけた。そして、そこに共感したメンバーが新規事業イノベーションを興し、多くの事業を創生している。江副さんは、起業家を創ることを経営のコアにした「本気の決断」をした。 

そして、今、一千億を超えるリクルートの利益の大半を、企業内新規事業が稼ぎ出している。 企業新規イノベーションの成否は、企業内起業家の存在が大きな要素となる。企業内起業活動を行うことのできる人材の才能は、有能な技術者や腕利きな営業マンとは違った、「新たな商品、ビジネスモデル、サービス」を創り出す価値を生む。

そして、企業がゴーイングコンサーンを目指す限り、価値の創造を続けなければ経営は存続しない。この「確信」に、経営判断基準をおいた、江副経営の本質がここにある。

「自ら機会を創りだし機会によって自らを変えよ」という言葉の、「自ら機会を創る」ことは受身でなく、自らを積極的に会社に働きかける意味と、「機会によって自らを変えよ」は、出合った機会は、自身を変化させ成長させるチャンスであることを示している。

企業組織が、大きくなるほど受身の指示待ち人材や、オペレーションにたけている人材が多くなり、イノベーターが存在しない組織に陥ってしまう。 「自ら機会を創りだし機会によって自らを変えよ」は、各人に「強く主体性を持って、会社で自分の居場所を創れ、それが出来なければ去れ」という強烈なメッセージでもある。

今年は、ますます企業再編時代に拍車がかかり、それぞれの会社でイノベーションが語られている。志を持って「自ら機会を創る決断」の、2007年猪年でありたい!

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