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コラム

第120回

「ロンドンで」

2008年の年明けを、世界の四大都市ロンドンで迎えた。
冬のロンドンは、曇天で夕方4時頃にはすでに暗く、街行く人々の吐息は白く寒かった。街並みは、テムズ川沿いに広がる石畳の道路や、石外壁で造られた中世の建物が、今でも数多く残っていた。

一度訪ねたいと思っていたナショナル・ギャラリーに、ロンドンタクシーで出かけた。中世の宮殿のような美術館に、ゴッホ、モネ、レオナルド・ダ・ヴィンチを始め、イタリア・ルネサンス、オランダ絵画など質の高い作品がコレクションされ素晴らしいミュージアムであった。(ちなみに、ロンドンの美術館は、無料で開放されている。)

また、ユニクロが2001年、初の海外進出をした繁華街のピカデリーサーカスの店を訪ねた。プライスは、日本ほど安くはなかったが、現地の競合店GAPの半値位で、多くの商品が並んでいた。客の入りは、まばらな状況であった。

現地の人に、ユニクロの評価を尋ねると、「商品は、品質も縫製も良い、プライスも値ごろ、しかし、イギリス人の多くは、服は大切に永く着る。車も永く乗る、日本人のようにショッピングがエンターテイメントだとは思っていない。家も中古を大切に使い回し、若い人達は5~6人でシェアハウスして、引越しする際、ベッドやデスク、食器棚などは置いてくるか、リサイクル品としてバザーで売って、質素な生活を心がけている。」と、教えてくれた。

確かに、先人の造った市場は、今でも古着や家具を始め生活用品のバザーの会場として利用され、賑わっていた。使える物は大切に永く使い、余計なものを削ぎ落とし、無駄なお金を使わない合理的な生活スタイルによって、人生を豊かに生きるイギリスの人々の哲学が、重厚な歴史を感じる街並みを残したと思えた。

また、市内を移動する際、映画ハリーポッターのロケ現場に使われたking’s Cross駅から、「チューブ」と云われる地下鉄に乗ってショックを受けた。

初乗り4ポンド(今年の一月、一ポンド約243円)で、なんと972円もした。シンプルなランチが、37ポンド、一人8千991円、4人で3万 5,900円。通常のスタンダードなホテルで200ポンド、5万円近い金額。そして、インターネット接続代1日あたり15ポンド(3,645円)だった。

最近、日本のGDPを始め、多くの国際指標ランキングが下がり、国際競争力が弱まり、円の通貨価値が下がっていることは理解していたが、改めて弱くなっていることを体感した。通貨は、国の経済、政治、文化の力の尺度といわれる。海外から見た今の日本の国力に、未来への危機感とこれからの日本のグランドデザインを考えさせられた。

今の日本の状態は、貿易や投資などを始めグローバル化の恩恵を受けている。また、個人金融資産1500兆有している資源の活かしどころがあるはずだ。

これからは、国と企業が一体となり、トヨタやキャノンといったグローバル企業だけでなく、任天堂のような国際競争力を持つ企業を一社でも多く増やしていかなくてはならない。

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