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コラム

第133回

「原点回帰」

過日、ニューヨークに11年勤務した金融会社のファンドマネージャーから、転職相談を受けた。「ウォールストリート」で、ファンドビジネスの会社に勤めていたが、今回の世界金融破綻で企業が倒産したので、日本に帰国したとのこと。

希望の報酬額を聞くと、日本では考えられない年収なので、現状を説明するとそのギャップに驚いていた。

アメリカ発のグローバル金融資本主義の拡大が、人の意識を変え、その破綻が世界の人々の生活を大きく変えるインパクトを与えている。この人個人だけの問題ではないが、その渦中にいると自分を見失うことがある。

今後、実業で仕事をしてゆきたいとのことで、これまで数社のエージェントに行ったが、案件がなく苦労しているとのことであった。国境を超えて最も移動しやすいのが「金」であり、移動に大きな困難を伴うのが「人」である。そして、その多くの人が、今翻弄されている。

さて、平等社会と言われてきた日本も、貧困の格差は拡がり、もはや残念なことに平等社会ではなくなってしまった。日本本来の、安心で安全の国、そして、人の人情の絆が破損され、人々の孤立が目立つようになってきた。

かつて暖かな日本の日常風景は、質素・倹約を旨とし、責任を持った頑固な親父達が尊敬されていた。しかし、こういった姿は、影を潜めてしまった。今、米国流のグローバル資本主義から脱し、本来の日本へ原点回帰する実業が求められている。

明治を築いた渋沢栄一氏が生涯を賭け創生した会社は、「論語と算盤」の視座があった。
売りぬくマネーゲームの会社経営でなく、ゴーイングコンサーンを目指し育つ会社を一社でも多くインキュベートし、次世代の若者達が誇りを持って働く職場を拡大してゆきたい。

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