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コラム

第139回

「独自性の創生は、パートナーと共に」 

私は、休日に民間の美術館によく行く。ある時、共通している歴史があることに気がついた。それは、時代によって美術館の運営会社の職種が変わっていくという歴史だ。ある時代は造船会社、その次の時代は鉄道関連会社、そして次は自動車関係会社といったその時代を象徴した企業が運営しているという流れがあった。

それからすると未来には、新たな移動手段を開発したハイブリットから、燃料電池モーターカーなどを始めとしたCO2を出さない機能を持った移動手段を主流に商品化した会社が次世代の運営をしている気がする。

その時代時代で成長した業種が違うのは当り前の話だが、私から見るとみんな「人の移動屋さん」で共通し、その時代をリードする企業に職種がバトンタッチしてゆく歴史が生まれていると思えた。

ところが、当時の船会社の中でも、鉄道が誕生しても船のことだけを考えていて、「次の時代の人の移動手段は何か」とは、発想も危機感も感じなかった企業は淘汰された。そして、これまでと違った新たな振興企業が誕生し美術館のオーナーになっている。

美術館のオーナーになるのには、相当の財力、余力、社会貢献企業でなければなれない。もちろん、美術館のオーナーを目指されなくてもいいが、次世代を代表する企業になるために大事な事がある。

最近、不況という言葉を多くの人々が大合唱している。今は世界経済全体が、パワーを失っている。新商品開発よりもまずは目先の利益確保が大優先となっている。そして、その為の減産しながらのコストダウンは、極めて苦しく難しいことである。経営陣を始め、そのセクションの担当だけで、答えを出すのは至難の業である。

ところが、そんな中で、業績を伸ばしている企業は、世間や業界の常識にとらわれることなく、「こだわり」を持ったオンリーワンのビジネスモデルで、愚直にひたすら現場で顧客の求めていることに答えるべく努力していることが共通している。

また、こういった環境下でも収益を出している企業の大半は、自社だけの仕組みではなく他社と組むことによって、化学反応を起こし組み立てによって大きな他にない利益を生み出している。例えば、モンベルのアウトドアウェアには、アメリカのデュポンのダグロンという素材が使われ揺るぎない存在になっている。また、東レの存在がなければユニクロのヒートテックは生まれなく、大ヒット商品には育っていなかったはずだ。

多くの企業経営者は、何処にもないオンリーワンの商品は、自社単独で創造することを考えがちである。限られた経営資源だけで、グローバル社会で戦い生き残っていくには、自社の強みを生かし、足りないところは他社の強みを生かしたことによる同盟戦略が競争優位を発揮することに気がついていない。

これからのグローバル社会の中で成長してゆくには、パートナー戦略が大きなテーマとなってきている。当社が、インキュベーション支援の一つにパートナーとの組み合わせに力を入れているのは、そんな考えからである。

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