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コラム

第167回

「花の時」

有難いことに、100年生きても普通の時代になってきた。だからといって、ずーっとキラキラ輝いていられるわけではない。なにしろ細胞は日々死んでいく。

劣化は避けられないのだ。だから人間として最も輝くときは、せいぜい40歳あたりまでなのである。残りはその輝いた時の名残なのだ。

なので、気力体力に自信のある方はそれなりに頑張られてもいいけれど、そうでもない方はできるだけ早々に、穏やかな日々を過ごされてはいかがだろうか。

人生についての「四住期」説でも、50まで頑張って働いて家庭を持って仕上げたら、50~75までは静かに暮らしなさいとある。75から先は、悟りの極みの話なので簡単ではないけれど。

ともかくは、時がきたら静かにしている事が大事であり、花の時で輝いている人たちを応援することで社会貢献はできるのだ。

花の時の人間は、やる気も元気もあるし、なにより新たな事や物を生み出す感覚は、この時期ならではの特性だ。これまでも、野望を持った若者の行動力で、世界は進歩していった。

それに、若さというのは、古くてダサいものを、格好良く生まれ変わらせる能力と感性がある。そのことを改めて思い出させてくれた会社があった。

最近、あちらこちらに、お洒落なビルが建設されているが、そこの広場に現れるキッチンカー達が、格好良くなって、看板のつけ方も含めて絵画のようになっているのをご存じだろうか。

(株)mellow(メロー)という会社が、企画、運営している。私なんぞの時代は、移動販売の軽トラックが、のぼりを立てて販売していただけなのに。

今や、車体がおしゃれなだけではなく、イベント的なテーマがあり、スマホ連動で呼び込みもいらず、売り方も買い方もスマートになっているのである。

そこの代表が、「せっかく沢山お金をかけて、カッコいいビルを建てたのに、違和感があるスペースにしたら気の毒かなぁと思ったんです」という、素直な発想から始まったそうだ。

そういえば、今から25年程前、100均のお店は、スーパーの店頭にひっそりと場所を借りてるだけの催事専門の業者さんであった。ある時から、バラエティグッズと呼ばれ、なんだかどんな素敵な場所でもおかしくない立派な売り場に変化し、新たな業界を築き上げた。

現金で買いたたき、安売りするバッタ屋さんが、多くの顧客を持つ立派なキラー店舗となったし、始めは安さを売りにしたファミリー向けの郊外店が、いまや日本で一番のアパレル会社になった。切っ掛けは、なんだか格好よくなった時からである。

デザインコンセプトに基づいた店づくりと情報発信の変革で、人の興味は変わるのだ。その、全ての新しい感性がおもいきり迸るのは、やはり花の時なのである。

思い切りダサい物を格好良く変える。古臭い商売を現代の仕組みを使って変革できるのも、花の時の人達なのである。なぜなら、【細胞がまだ沢山生きている】からだ。

そして、時が経ち、先輩の立場になったら、次の若者を思い切り応援する。思い起こせば、多くの年配者は、若い時に、先輩達に応援してもらってきたのだ。

若者たちの感性を信じて、託す。その、循環がうまくいけば、未来も明るいと思うのは、またまた私の思い込みだろうか。

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