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コラム

第250回

「紅いシリコンバレー 深セン」

中国の紅いシリコンバレーといわれる深センに行ってきました。

経済特区となってわずか30年。鄧小平の号令により、人口30万人だった田舎街が、人類の歴史上比類のないスピードで1,400万人の人工都市に変貌しました。バイクもゴミもなく、テンセントを始めとする高層インテリジェントビルが建ち並び、シェア自転車やスマホ決済、電気自動車が浸透している、若者が集う世界都市となっていました。

現地で働いているビジネスマンに話を聞きました。「大卒の給与は10万円、ITエンジニアは15万円、工場の工員は約8万円。バスの支払いからなんでもウィチャットペイの電子マネーで支払い、現金を使うことはない。皆夫婦共稼ぎで、子供は祖母に面倒をみてもらっている。都会の高層マンションは億を超え、普通の稼ぎでは住めない。自分は郊外で中古のマンションを買って住んでいる。新築は住んでみないと価値が解らないので、深センでは人気がない。中国全土から若者が集い、毎年新しい地下鉄の路線が通り、毎年人の流れが変わる。シェア自転車はGPSとインターネットが組み込まれ、スマホでチェックインし、どこで借りてどこで乗り捨ててもいい。この街は、退職後も住み続ける人は少ない。」とのことでした。

「世界の工場」として知られた深センは、GDPが香港を抜き中国で最も生活費が高い街として、金融とイノベーションの街に変化を遂げつつあります。三和人材市場に、中国全土から戸籍を持たない若者達の日雇い労働力を集めているものの、もはや安い労働力を提供するエリアではなく、90年代に作られた一部の工場は、郊外や内陸部、ベトナムなどに移り始めていました。

テンセントやHUAWEIを始めとする大手IT企業が集積する南山区のITパークには、巨大な高層インテリジェントビルが林立し、国の力で作り上げた広大な敷地内に、人材や資金の人工エコシステムが出来上がり、まさに中国のシリコンバレーエリアとなっています。

「アメリカのシリコンバレーの1ヶ月は、深センの1週間」と言われている程、ハイスピードで発展した経済特区都市となっています。過去を引きずっていない文化の無い人工都市。今も形を変えて、発展し続けているIT都市。目に映る巨大な高層インテリジェントビル群と、目に見えない人工エコシステムが創り上げた都市深センが、これからどんな姿に変貌していくのか見据えていきたいものです!

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