column

コラム

第176回

「陰平陽秘(いんへいようひ)」

数年前に、薬膳料理に興味を持ったり、菌類、特にきのこの菌に興味を持ったりしたことがある。

なので、上っ面で、薄っすらではあるが、いくつかの言語や理論を覚えていた事もあり、でも、実は給食という言葉に大きくつられて、薬膳と発酵食品のイベントに参加してきた。

主催の女性は、重い病の告知を受けた時に、自分で食事と生活を見直し、結果、現在も健康状態を保たれているという、とてもチャーミングでキュートな方で、繊細な体に潜む精神力に感服した。

発酵食品についての講師の方は、自身が起業家でありながら、多くの起業家を育成するインキュベーターでもあり、発酵の研究家でもあり、復興支援も続けている魅力満載の女性である。

私はといえば、勉強熱心で、行動力溢れる女性軍の渦の中に紛れ込んだ怠け者なので、大人しくしながらも、体に良いお料理をひたすら、たんまりと頂いた。
分った事は、食の知識があると、一つ一つの食材に愛着がわくので、料理が上手になるから美味しく出来る。そして、その知識と愛情こそが、養生に欠かせないものなのだということだった。

そう、養生とは、まさに「陰平陽秘(いんへいようひ)」を意識する事だと私は思う。
陰平陽秘とは、人体の機能と物質の関係は、陰陽の相互依存、相互消長関係なので、バランスが崩れると、人の持つ機能が低下、あるいは消滅してしまうという事を指している。そのバランスを保つために、養生、つまり、自身で食や生活スタイルを管理することなのである。

体にいい物、必要な物を摂取し、よく動き、ちゃんと休息をとる事だ。
なにしろ、食事は、本格的に知識を得ていくと、病気も治療できる。
昔から、食医は位も高く、重宝されていたのである。

そういえば、随分昔、体調を崩して食欲が落ちていた時に、中華店のオーナーが特製鍋を作ってくれた。知らない香りと見たことのない食材で躊躇したが、瞬く間に元気になったのを思い出した。あれこそ、本格的な薬膳鍋であったのだろう。薬膳は覚えたら人助けもできる、と思う。

また、発酵に不可欠な菌の働きも、話し上手な講師さんのおかげで面白く楽しかった。そして、菌に対する意識も変わった。麹菌、酵母菌、乳酸菌、酢酸菌、納豆菌、の「菌さん」達が、人間の健康を支える大きな役割を果たしている事に改めて感謝したのである。

食品は分解しないと栄養にならないが、それが、彼らの役割だ。
食物繊維は、腸の運動を助ける。なにしろ、腸の調子がいいと気分がいい。
だから、腸を動かすために、食物繊維を充分に取る。
体調や体質に合わせた旬の物を食し、適度に運動し、適度に休む事である。

日々雑事に追われ、仕事に追われながら、そんな、のんびり出来るはずがないと思っても、毎度の食事の時に、できるだけ添加物がないものを選び、腸活によさそうだと思うものを一品足すだけでも効果はあるはずだ。休息は、ほんの隙間時間に、気持ちを変えるだけでも違う。
私も、菌さん達の為に、インスタント食品や、ジャンクフードは控えめにして、発酵食品と食物繊維を意識して食べる事にした。

命ある限り気分よく過ごすために「陰平陽秘」の状態を保てるように努力をするのである。
といっても、食べるだけなんだけど。

コラムを毎月メルマガでご購読