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コラム

第195回

「テーマパークの魅力」

郊外店のサーチを兼ねて2年ほど前にオープンしたテーマパークに寄ってきた。感染症対策でキャラクターに触れ合う事は出来ないのだが、私は楽しませて頂いた。密にならない広い空間を、スタッフの明るさに癒されつつゆっくり散策できたからだ。

そこで、テーマパークって何だ?と改めて思ったのである。日本においては、1911年に遊園地なるものが出来たが、本格的に増えていくのが、戦後まだ間もない1950年代からだ。

そうはいっても、非日常的で、何か特別な主体や思想に基づいた現在のテーマパークに近い空間は、1965年に開設された明治村が最初だと言われている。

つまり、日本のテーマパークの歴史はたったの60年ほどでしかない。その間、数多くの施設がどんどん開設されては、どんどん、どんどん閉鎖されていった。

その姿をどれだけ多く見てきた事か、莫大な費用をかけたが頓挫した跡を、新しいコンセプトで再生して成功されたところもあるが、同じ初期投資をかけたとしたら回収できるかどうかは疑問が残る。

そう、つまり、本当に非日常的な空間をつくるなんぞ、どれだけお金をかけても足りない。夢の国の上を見たら、隣町の電線やらビルやら、他にも日常的な物が見えたら台無しだ。ということは、見えないくらいの壁をつくるか、地下を掘り下げるか、さらにさらに土地を広げるかである。

資金調達、土地の開発、整備、特殊な建物、数多くのスタッフ、様々な法規制の対応等、小さな町どころか、新たな国をつくるくらいの気合と根性で創造していくしかない。その上、どこかのどなたかから「テーマ」をお借りしたりしたら、その方々の御意向も取り入れないと進まない。各地のテーマパークを訪れる度、そこ、ここにそのテーマなりのご苦労の跡を見つけては、労う気持ちを抑えられずにいたものだ。

ともかく開設するまでも大変だが、そこからは運営にすべてがかかってくる。だから、人気のあるテーマパークは、運営企業が相当な努力を重ねているのがわかる。

箱は、大きかろうが小さかろうが、初期に投資ができれば、形にはできるが問題はそのあと、その空間に命を吹き込み続けることができるかどうかだ。

仏作って魂入れずというのは、『良いものをつくっても、大事な物が欠けていたら台無しになってしまうよ。』という教えだが、まさに、テーマパークの魂とはなんであろうか。

そういえば、ある著名なプロデューサーが、成功の秘訣は「哲学だ!」とおっしゃったのを思い出した。まさに、その哲学を共有した「人」が創り出す空間がテーマパークなのではと思う。

キャラクターに会えなくても楽しませてくれるのだから、この息苦しい困難を乗り超えた先には、大小関わらず、それぞれの哲学を持ったテーマパークならではの新たな感動を与えてくれるはずだ。

「人々が幸せになる場所をつくる」というのは、どこも同じだとは思うが、実行するのは本当に難しい。それを本気でやり続けるところが、本物のテーマパークなのだと思うことにした。あなたを笑顔にするために、テーマパークの方々は待っていてくれるのだよ。

有難いね。

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