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コラム

第214回

「北海道の起業家夫妻」

GWに、北海道の湧別川上流の白滝を訪ねました。 5月に何度か北海道を訪ねましたが、いつも肌寒く桜も蕾のままで、稲作文化が根付かなかった極東の地を感じましたが、今年の北海道は、温暖化の流れもあってか抜けるような青空と緑の丘陵の大地に、爽やかな風が流れていました。

白滝の地で、真っ黒に日焼けした農業に夢を賭けた夫妻に出逢いました。東京でのサラリーマンを辞め北海道に移住し、2012年4月、北海道でアグリカルチャービジネスを起こした素敵な起業家夫妻でした。

話を伺うと、「起業にあたり、農家で研修をしながら計画を立て、大雪山を一望できる約42ha(東京ドーム約8個分)の広大な土地を取得し、「江面ファーム」として独立した。主に、国が生産量を確保するために力を入れている原料(じゃがいも・甜菜・小麦・スイートコーンなど)を中心に、地域のパートさんや住み込みの学生と共に大型機械を導入し、生産性を高めた仕組みを作り、価格の変動も少なく、仮に天災により被害があった場合でも9割は加入した保険で国がカバーしてくれるリスクヘッジをしている。SNSやインターネット通販を活用して、都内のスーパーでは見掛けることのないこの地でしかできない付加価値の高いじゃがいもの直販もしている。」とのことでした。

横浜にある大手食品・化粧品メーカーで商品企画の仕事をしていた奥さんは、付加価値の高い「白滝じゃが」を広めるために、じゃがいも料理コンテスト『じゃがりんぴっく』を年1回開催し、インターネットでレシピを募集し、入賞レシピをまとめたレシピ本を出版したり、農場女子として、農業の新しいフィールドのPR活動なども展開しています。

コンビニやスーパーが一軒もない白滝の地で、家庭菜園で収穫した作物を物々交換する文化が残る生活をしており、お金を使うことも少なく、東京にいた頃よりも生活が豊かになったとのことでした。 

冬の間には、仕事が休めるので海外旅行に出かけたり、3歳になる娘と毎日家族そろって食事をする生活スタイルは、日本人が忘れかけている日常の中に心豊かな幸せがあることを教えてくれるような気がしました。

今年の4月の地方選挙の大きなテーマは、地方創生でした。各地で起業を盛んにして産業を起こし、東京の一極集中ではなく、地方の雇用を確保し自立経済にしてゆこうとの狙いです。

北海道の大地で起業した夫妻が、かつての日本の農業ではなく、独自の地域の資源を活かし、付加価値の高い商品を生産性の高い新しいビジネスモデルで作り、心豊かな生活を営んでいる姿は、地方創生のあり方を示唆してくれました。

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