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コラム

第129回

「ああすればよかった、こうすればよかった」

人は、生きている間に、必ず後から思う事があるはずだ。あの時の判断は正しかったのか、もっと違う事が出来たかもしれないとか。

人生は決断の積み重ねなので気が付かないが、時に大きな方向転換に遭遇しているものである。その時に、どんな判断を下すかは、日頃の自分の基準からなる。

経営者の中で後悔といえば、極論だが、会社経営の失敗、倒産、失墜ではなかろうか。ああすれば良かったと悔やんでも、もうそこには、何もない。築き上げた財産も信用も、費やした時間も。全てが無くなる。

私の周辺でも、成功者ばかりではなく、会社清算を余儀なくされた起業家は少なくは無い。その中でも、その後の生き方にそれぞれの個性が出ていて、判断基準が改めてよくわかる。

例えば、ある研究者タイプの経営者の方は、50歳を過ぎて大学に通われて、若者との会話で、コミュニケーションの取り方を再度学ばれている。また、大きな痛手を負う前に清算した経験を活かして、経営コンサルタントの道を選択された方や、つてを頼らずに純粋な転職活動をして、静かな日々を送られている方。海外に拠点を移して新たな道を歩まれている方。そしてもちろん、再起業をして上場を目指そうと奮闘されている方々もいらっしゃる。こういう選択が一番大変なはずだが、何故か、見た目は共通して若い。

日本では、倒産経験を持つ方の中で、再起業家となる人は約10%で、潜在希望者は約43%、つまり過半数は再起業を望んでいるという調査結果がでている。

とても、良くわかる。起業した人間は、自分のやり方で死ぬまで挑戦したいのだ。ああすれば良かったと後悔しないで生きる為には、成功するまでやるしかないのである。

私は、自身のキャラクターのせいか、年配の方の転職相談や、再起業を目指す方の相談にのる事が多い。脳天気な私と話をすることで、根拠は無くても自信が湧くからだと思うが、そんな役割でも私は満足している。

年齢や失敗に関係なく、前を見ている人は、素晴らしいと思えるからである。諦めない人には、魅力が満載なのだ。どんなに困窮していても、自立を目指す人には独特の輝きを感じる。若さの秘訣は夢を見続ける事だとも思う。

日本の活性化の為にも、知識と経験豊富な再起業家をもっともっと支援する仕組みが必要だと思っているのだが、政府の制度は、壁越しに話をしているもどかしさを感じる。

もっと、民間で動きが無いものかと思っていたら、チラホラと、そんな機関や支援団体の動きがある。どちらかというと経営者募集で、地方企業の継承や再生案件に着手するという形だが、再チャレンジへの選択肢があるのは有難い事だ。

そういえば、勝ち組の経営者の集まりで、つい「私失敗しかしてないので」とつぶやいてしまったら、その方々から、殆ど同時に「チャレンジしたから失敗したといえる、何もしないのが一番の失敗だ」と一斉に言われた。

やはり、決断を恐れない方々は成功しているのだ。いや、成功するまで続けたということなのだ。ああすれば良かったではない、ああして良かったと思う人生が、やっぱりいいよね。

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