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コラム

第267回

「新素材による産業革命」

ザ・ランドマークスクエアトーキョーで「グローバル人財フォーラム2019」が開催され、「ニッポン新事業創出大賞グローバル部門・最優秀賞(経済産業大臣賞)」に、新素材メーカーの株式会社TBMが選出された。

このフォーラムは、加速度的に人口「激減」時代へと突入する日本企業が逆境に立ち向かうには「国際化」が重要ととらえ、世界市場に挑戦し活躍しているスタートアップを称賛する趣旨で日本ニュービジネス協議会連合会と東京ニュービジネス協議会が創立した。

TBMは世界で初めて石灰石から紙とプラスチック両方の代替となる革新的な新素材「LIMEX(ライメックス)」を開発したグローバルスタートアップだ。原材料となる石灰石は、世界各地で埋蔵量が豊富で、日本でも100%自給自足できる。

地球環境への負荷が少ないリサイクル可能な素材で、水を使わずに作ることが可能だ。紙と同様に軽く安価なので16年の販売開始以降、ライメックス製の名刺など様々な製品が大企業からベンチャーまで導入されている。また高い耐水性を持つため浴室や水回り、屋外、水中でも利用でき、スポーツイベントなどの横断幕にも使用されている。

現在は世界30カ国を超えて特許登録され、紙とプラスチックの代替素材としてビジネスとサステナビリティーを両立させている。 TBMは創業からわずか10年で資本金107億円(資本準備金含む)を超える企業となった。

ライメックスの開発後に工場を建設して製品を量産化し、世界でも圧倒的なスピードで販路を拡げている。地球環境問題が世界中の課題となり、企業にも積極的な姿勢が求められる時代背景や、石油樹脂を減らし開発に水や木を使わない素材特性があるとはいえ、これほど短期間に世界で成長するスタートアップは、日本では珍しい。

TBM創業の頃から同社は「サステナビリティー・ビジョン」を掲げ、共感した経験豊かな90代の会長から20代の若手まで幅広い年齢層のメンバーが集まった。そして若手とシニアが協力するダイバーシティ組織と、圧倒的なスピード意識を持つカルチャーをつくりあげた。この2つの要素がかみ合って「最強のチーム」が生まれ、世界で新たな市場を創り出す原動力になっている。

世界では今、地球の温暖化を始め様々な環境問題が噴出している。国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」は、政府の対応では限界があり、起業家の潜在力が期待されている。TBMは「石油に頼らない未来」というビジョンを描き、日本の技術で生まれた新素材で、巨大市場に果敢に挑戦している。世界の水危機や森林問題解決の糸口となる「新素材による産業革命」がスタートした。

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