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コラム

第269回

「アプリで進む未来の医療」

「24時間、365日スマートフォンで医師に相談できる」という医療相談アプリケーションがスタートした。医師の伊藤俊一郎さんが立ち上げたドクターシェアリングアプリ「LEBER(リーバー)」だ。

利用者はスマホで選択式の問診に答え、フリーテキスト記述や画像・動画での相談もできる。最速3分で医師が症状と疾患を絞り込み、疑いのある疾患についてコメントする。遠隔診療ではなく、症状に見合った大衆薬や全国の医療機関を推薦する。いつでも、どこでも医師に気軽に健康相談できるオンライン上のプラットフォームサービスだ。リリース以来、すでにユーザー数が8,000人となって急拡大している。

リーバーの開発は高齢化を背景に医療費が増大し、このままだと医療崩壊するという伊藤さんの思いからスタートした。0歳から50歳までの基礎疾患のない人たちは、軽症でも自己負担が少ないので安易に医療機関に行くことが多い。

こういった人たちは、医師の「心配ない」の一声や、症状を和らげる薬を求めている。伊藤さんは「軽症な症状ならスマホアプリで問診を受け、医師のアドバイスを得ることで、常に混雑している医療現場を改善できる」と語る。

そして「大衆薬を使うセルフメディケーション、セルフケアで、医療費は大きく削減できる。本当に医療機関での治療を必要としている高齢者が適切な医療を受けられる世の中にしたい」と全国の医師に呼び掛けた。

医療の課題解決を視野に入れた革新的なドクターシェアリングアプリ「リーバー」は、趣旨に賛同した医師の実名登録が110人を超え、日本最大級の実名医師による医療相談プラットフォームとなった。

病気やけがの治療で医療機関に支払われた「概算医療費」は毎年増大し、過去最高の42兆6000億円となっている。このまま医療費が増えていくと、財政破綻の一因になりかねない。国民皆保険制度で当たり前のように安心して病院を受診することが、将来は成り立たなくなる可能性がある。医療費の増加に歯止めをかけるには、不必要な通院を減らさなければならないという状況だ。

近年は厚生労働省でオンラインによる適切な「遠隔医療」の検討が話題になっている。2020年から次世代の高速通信規格「5G」が始まる。あらゆるものがデジタル化し、オールインターフェース時代が目前に迫ってきた。

現在実施されている5Gを使った遠隔診療サービスの実証実験では、医師と患者とのやり取りが「フェース・ツー・フェースで診察している感覚」だという。5Gや人工知能(AI)、ICTテクノロジーへの適応で今後の診療のあり方や医師の働き方が変わり、病院での医療から社会を支える医療へと姿を変えようとしている。

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