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コラム

第282回

「サーキュラーエコノミー」

6月25日の日経産業新聞へ寄稿した記事を紹介させていただきます。

様々なシェアリングサービスが普及し、「富山県朝日町での新しい公共交通サービス」の実証実験を始め、

「シェアリングエコノミー」の市場規模が拡大している。サーキュラーエコノミー(循環型経済)先進国のオランダ・アムステルダムでは、このシェアリングが子供の幸福度1位の要因となっているのかもしれない。

日本でも、やりながら学んでいくことでニューノーマルが見えてくるのではないだろうか。

「サーキュラーエコノミー」

「モノを買わなくなった」と、よく聞くようになった。必要なものがいつでもやすく使える「シェアリングサービス」が普及し、車・家電・洋服・音楽・宿泊・住宅など、様々なサービスを利用する人が増えている。

2020年8月、富山県朝日町で「地域住民の移動をサポートする新しい公共交通サービス」の実証実験として「ノッカルあさひまち」がスタートした。コロナ禍でバス会社の撤退が相次ぐ中、この実証実験に注目が集まっている。

「ノッカルあさひまち」はご近所さんの自家用車でのお出かけついでに「乗っかる」ことができる送迎サービスだ。

高齢者の多い地域の移動課題解決のため、朝日町役場、地元タクシー会社の黒東自動車商会、スズキ株式会社、株式会社博報堂が連携し、新たな交通網をつくる試みだ。一般ドライバーの自家用車を活用し、地元の交通会社と連携した「自治体が運営する助け合いの公共交通」は車両費と人件費抑えたローコストモデルだ。

その時々のライフスタイルにあった、必要なものを必要なときだけ利用する「シェアリングエコノミー」は技術革新によって市場規模が拡大しており、2020年には過去最高の2兆円を超えた。

シェアリングで先行するアムステルダムの知人から「2020年にユニセフが発表した子供の幸福度ランキングでオランダが1位になった」と聞いた。

欧州委員会ではリーマン・ショックを契機に「資源の効率化」を成長戦略に組み込み、地域のコミュニティに根ざしたサーキュラーエコノミー(持続可能な社会を実現するための経済の革新的な産業モデル)を目指している。

「所有」から「共有」へと生活スタイルが変わった「スマートシティ・アムステルダム」。モノやサービスの価値やカタチが変わり、消費行動が変化し家族で過ごす時間が増えたことから、子供に良い影響を与えているのかもしれない。

江戸時代の庶民は集合住宅の「長屋」に住み、井戸やトイレ、ゴミ捨て場などを共有して暮らしていた。土鍋や皿や鉢などの食器の貸し借りや、食材や料理のお裾分けといった日常生活の光景が広がっていた。

長屋の住民たちは生活必需品のシェアだけでなく、子供が生まれると地域のみんなで世話をして育児を支え、江戸時代の子供たちは、のびのびと育ったと言われている。

日本でシェアリングエコノミーが広がっている背景には、おそらく江戸時代のこういった支え合いの文化や生活スタイルが日本人の根幹にあるからだろう。

日本のサーキュラーエコノミーの姿は「江戸時代の文化と生活」と「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を融合させ、「やりながら、学び、改善する」ことから、ニューノーマルが見えてくる。

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