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コラム

第17回

「インターウォーズ代表取締役 吉井信隆」

インターウォーズ11年目の初めにあたり、一番身近な経営者のお話。

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サラリーマン時代から「じゃ、商売に行ってくる!」が、朝のお出かけの合図だったと奥方に聞いた。なんと、昔から、吉井家には火打石が常備されているのだ。

今時?!と思いつつも、微笑ましくもある。新潟県生まれ、幼馴染と一緒になって、東京は千住の下町に住みついた銭湯好き。2人の兄妹の厳しくも優しい父親。仲良し家族は、安定した企業を退職して、日本で未開発のインキュベーション事業を始めると言っても大賛成したと聞く。

そんな家族に支えられている吉井は、驚くほどの純情派、派手な生活は好まない。経営者仲間たちからも「吉井さんは真面目だ」と感心されている。だからこそ、こんなに時間がかかり、かつ手間のかかる長期型インキュベーションが出来ているのだと思う。

吉井は、学生時代には、大変苦労したようで、経験したアルバイトは30を超えるそうだ。食べるために、生活の為に、少しでも給料の取れるバイトを探した。

今となっては、その経験が役にたっている。あらゆる現場の、驚くような細かい事を知っているので、様々な事業の経営者が一目を置く、また、運命に導かれて入社したリクルート時代に、事業は人材で変革出来る事を実感し、経営は『経営者の思いを形にすること』だと、確信した。

常に経営者としての目線で、利益を上げる事を大切にしていたせいか、営業成績も良く、出世も早かったが、創業への思いも募っていたようだ。

そんな、真面目な吉井と「インキュベーション?!そういうことなら、私が、いた方がいいと思いますよ」という生意気な私との出会いが10年前。気がついたら、いくつかの事業が生まれ育っていた。その間、吉井の推察力には、舌を巻かれる思いを何度もしてきた。

10年も経つと、人の人生や企業の変化にいやでも遭遇する、その折々に、数年前に吉井が言った通りになっている事の多さに驚く。感や、思い込みだけではなく、情報のメンテナンスを怠らないからだと思う。

時には、クライアントにも、苦言を言わざるを得ない仕事である以上、本物の情報を持ち、自分を律して、より適性な判断をしなければという思いは強い。だから、お追従がいえない、可愛げの無い人と映る事も多々あるのだが、半面嘘がつけないのだろうと理解している。

何を考えているか、すぐにわかってしまうので、楽といえば楽であるが、たまには、お世辞の一つくらい言って欲しい時もある。しかし、苦手な方便を使おうとして逆効果になる事もあるので、いずれにしろ、周りにしてみると、なにかと、注意が必要な世話のかかる人である。

インキュベーションという仕組みを知ってしまった私達には、遠大な目標が出来てしまい、これからもまだまだ、完成されない道のりを歩いて行かなければならない。

「愚直にやるしかない」という吉井の言葉通り、世間の評価等気にせず、より多くの人の出会いや企業の成長に係わり、100年後に、天才と呼ばれる司馬遼のような小説家に「全霊を上げてあなたの心を書く!」と言わしめる「人物」になって頂きたいと願っている。

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