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コラム

第80回

「リクルートのDNA」

過日、リクルートの創業者の江副さんが、経営者が集う公の場で14年ぶりに「リクルートのDNA」というテーマで講演をした。

「お~吉井君」と、会場で少し照れながら語りかけてきた江副さんは、昨年三月、14年の長きに亘ったリクルート事件の公判判決が確定し安堵したせいか、ふっくらとした風貌で現れた。

自然体で少しジョークを交えながら、「リクルートの創業時から、今日の売上げ3,600億、経常利益1,100億経常利益率32%を創生してきたものは…」と、語る内容は、まさに「創業者の経営哲学」だった。

「わからないことはお客様に聞く!このことを、経営に反映させた。情報を流通させることが業界を制すると考え、コンビニに、100円の本なら販売手数料を90円払い、徹底してリクルートの情報誌を並べていただいた。

人材採用は経営のもっとも重要な要素と捉え、リクルートに優秀な人材を集めることに、徹底して力を注いだ。数千人のアルバイトの中から社員に登用した人材は優秀であり、今でいうインターンは40年前にやっていた。

女性を採用する際、必ず女性が面接し、若い人の採用は、1~3歳年上の若い人が、何度も会って選考する。やる気やリーダーシップのある起業家精神旺盛な人を、SPIを使ってセグメントした。外国人やヘトロジニアス(個性的)人材をできる限り採用し、多くのフリーランサーに仕事を委託し、リクルートの仕事をしていただき、外との垣根を低くした。

自分はリーダーシップが弱いので、事業部制を取り入れ、多くのプロフィットセンターを創り、社員に経営の機会を与えた。社員から新規事業の提案が上がる仕組みを創り、年間300件近い提案の中から2~3件選び、事業化した。

今日の事業は、こういった新規事業インキュベーション制度から生まれ育ったものである。自己申告制度を取り入れ、上司とうまくいかない弊害をなくした。相性がうまく合う様にすれば、人は生き生きと働き、大きな成果が上がる。

海外旅行や社内のキックオフのイベント・お祭りをよくやった。社内報やビデオをはじめ、社内情報の共有化を徹底し、情報共同体組織に努めた。社員持ち株制度を取り入れ、今では、ストックホルダーとして、社員持ち株会が筆頭株主である。

デザインは、人を魅きつける大きな力である。デザイナーの亀倉雄策さんを経営陣に迎え、本や、ビルのブランディングに注力した。機械にできることは、極力機械に仕事をふった。

誰をどの仕事に配置するかの、人事を徹底した。脅威と感じるほどの事態のなかに、隠された発展の機会がある。変化をコントロールすることはできないが、できるのは先頭に立つことである。われわれのあとに続く人は、われわれより優秀でなければならないと考え、人材採用に多くの時間とエネルギーとコストをかけてきた」

リクルートという会社は、リクルート事件により様々な社会から制裁を受け、企業基盤を揺さぶられたにもかかわらず、企業の活力を失うことなく1,000億を超える収益や事業継承がこれまでスムーズに行われている。

そして、さまざま分野でOB達が、才能を開花させ活躍している。江副さんは、目には見えない「リクルートスピリッツ」という「DNA」を、リクルートに残した。 

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