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コラム

第142回

「変化の中に、チャンスが」

新政権発足から2ヶ月が経った。ハイスピードで財政支出政策を打ち出しており、新政権に期待したいが、富を創出する政策や戦略が一つもないことが気になる。

家庭に例えると、奥さんが家庭内の支出を昨年とは違った使い方をしようとしているが、その総額は950万、一方旦那が稼いでくる年収は400万であり、 550万のマイナスだ。収入を上げてゆく為にどうするのかの計画がなく、収入をはるかに超えたお金を使い、しかも、子供を担保に8,600万借金をしている現状にある。

過日、長年経営に携わられた方から、今の経済状況は過去の延長にない、統一の答えのない不透明な時代であると感じるとの話を聞いた。

2007年を起点に、毎年40万人ずつ就労人口が減っている。そして、今年もあと2ヶ月となった。今年の上場企業数は3年前の4分の1にも満たなく、失業率は6%近く、戦後最悪と言われている。

今、私たちは、デジタル、グローバル、成熟化、高齢化社会の構造変化と世界同時金融危機によって、パラダイムシフトが起こっている渦中にいる。その結果、人々の価値観が激変している事実を目にすることが、最近特に多い。

ユニクロや、ABCマートや、ニトリは、単に安いから売れているのだろうか。また、プリウスは、エコの補助金があるから売れているのだろうか?生活者一人ひとりの持っていた価値観の急激な変化によって、選ばれる商品やサービス選択の変化のスピードが劇的に速まってきている。

人はゆっくりとした変化には鈍感であるが、昨年のリーマンショックをきっかけに、一気に人の意識の変化が表面に出てきた。

過日、若い人たちの飲み会で、リッター4キロしか走らないような車やブランド品を身につけていると恥ずかしいとの声を聞いた。今は、賢い消費をしていないと格好悪いという時代に向かっているのだと思えた。

資源のない日本の企業はこれまで、付加価値を付けた商品を北米を中心に海外(ここ数年は、アジアへの輸出が48%)から外貨を稼ぎ、黒字貿易によって内需を喚起する国のモデルが、世界のGDP2位のポジションを創ってきた。そして、今このモデルはほころび始め、いつの間にか貧困率が先進国ではワーストとなり、これからは価値ある良い商品を内外に安く売る流れを創らないと、生き残れない風潮になっている。

一方、不景気だといわれながら、国民の個人資産が1,400兆円もある国は、世界中どこを見渡しても存在しない。社会の中に息づく、一人ひとりの生活者の変化した価値観に対応する、商品・サービスが無いから、無駄なお金を使わなくなってきている。

過日、地元の繁盛店の店長から、「週末に孫が来るから」と、お菓子や肉を買うお婆さんが増えているとの話を聞いた。見えない週末家族が増え、そこに向けての小売のMDができているお店が、繁盛している。こういった一人ひとりの購買の動きを掴みとってイノベーションできない企業に未来は無い。

今回の強烈なリーマンショック以降のパラダイムシフトの中にビジネス機会がある。顧客を見つめる目とクリエイティブな能力を磨き、行動力のある人と企業がチャンスを掴み、生き残る時代を迎えている。

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