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コラム

第158回

「競争優位は、信頼の絆」

9月8日、華々しくデビューした振興銀行が破綻し初めてペイオフが発動し、3,500人が自己責任として預金を失った。日本国が財政悪化にあえぐ中、店頭公開企業数は低迷し、公開企業もピーク・アウトしてしまう企業が後を絶たない。リーマン、円高、株安は何処の企業も遭遇している。環境変化を感知し、素早く適応し、成長を維持している企業と衰退する企業の違いはどこにあるのだろうか?

トップの先見性や、特殊な予知能力を持つ人だけでなく、今の社会は、ネットの力によって世界の潮流や出来事を瞬時に掴むことができ、素早く対応ができる。

盛哀の分岐点は、現場の社員が「上が期待しているのは言われた通りに動くことだ」「今の苦悩を解決する策を、上に提案しても無駄だ」という主体性がなく問題意識が欠落し、日々の仕事を漫然とこなしている状態になることから始まる。変化の兆しは必ず現場のどこかに現れ、メンバーの苦悩の種になる。

上司やトップが「自分ががんばって引っ張っていかなければ下は動かない」「とにかく当面の目標・結果がすべて」という意識での経営の意思決定が続くと、いつか会社は破綻する。

起業時は、全メンバーが顧客の声に敏感に反応し、人がいないので一人ひとりが”自己責任で自分がやるしかない思いで動く”そして、”メンバーを信頼し、チーム全員で目標に向け頑張る”。

ノウハウもインフラも何もない中で、トップを中心に全員が希望を持った活発なコミュニケーションを取り、知恵を出し合い試行錯誤を繰り返しながら、可能性に賭ける状態が、創業時には何処の企業にも共通する。

私が、企業内起業が、企業のイノベーションへのエッセンスと考えたのは、こういったことに起因する。企業内起業の核心は、会社の経営陣と個人との「信頼の絆」にある。しかし、成長企業の多くはこの互いの信頼の絆を、量的な成長率や効率や能率のために犠牲にしてしまい、風土化できずに風化させてしまっている。

活力を失った企業経営を診ていると、単年度のP/Lの黒字を捻出する為のリストラをし、人材採用を手控えるなど、会社と個人の信頼や希望を失わせている。自己責任を問うことなく、会社都合で人を減らし雇用を維持しない施策は、信頼の心を萎えさせている。

人は、実績の無い自分に会社が賭けてくれた時、会社のビジョンと自分の仕事と情熱がシンクロし、信頼の絆が築かれ成長ドラマが生まれる。

グローバル社会の荒波を人間力集団で乗り切るには、人への「投資・信頼」をキーワードに、自律した人材を育成することにある。

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