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コラム

第229回

「起業立国のカギ」

世界の祭典RIOオリンピックを終え、いよいよ東京オリンピックに向け胸膨らませる矢先、来年の日本の成長率予測が0.1%と発表されました。

IMFによると、先進国は来年の平均成長率が1.8%、新興国では4.1%から4.6%と予想しています。日本だけ取り残され、マイナス金利国債を発行し、ゼロ成長社会となっています。

2014年に格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが、日本の債務格付けをAa3からA1に1ノッチ格下げしました。なんと、G7先進7カ国のなかではBaa2をつけているイタリアに次いで低く、韓国、ベルギーより低い評価をされています。

アベノミクスの目標の一つに、日本が再成長するには「起業立国」になることだと掲げられました。しかし、残念ながら進んでいません。

起業家の創生には、起業家へのリスクマネー投資と、大企業との連携がカギとなります。
リスクマネー投資は、年間VC投資額が1,400億円と増えました。しかし、米国の年間VC投資額約6兆円と比較するとあまりにも少額です。
2008年のリーマン・ショック以降、投資が下回っていましたが、大手企業のCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)が増大しています。

米国の大手企業の多くは、ベンチャー企業をM&Aし、グループ内に取り入れ企業グループを成長させていきます。

ベンチャーキャピタルのベンチャー投資のEXITの90%は、IPOではなく大手企業への売却で成り立っています。大企業のM&A投資金が、VCを経由してベンチャーに循環する仕組みが出来上がっています。
日本は残念ながら、米国のような循環の仕組みが成り立っていませんが、CVCの設立が増大し、VC との連携により、ここ数年ベンチャー企業への投資額が拡大しています。
また、大学の知財を事業化するための資金提供を行うGAP(ギャップ)ファンドのスキームが、大学系VCファンドに活用され始めています。

これまで、大学の研究技術を事業化するのはリスクが高く、VC投資には至らないケースが大半でした。GAPファンドとは、試作開発段階で市場可能性を確認する資金です。
こういったスキームによって、TLOベンチャーの誕生が、年間100社を超え始めてきました。

一方、当社で2009年にスタートした「イントレプレナー塾」から、900名を超える卒塾生が出ています。プラス・ジョインテックスカンパニーの社内起業家が立ち上げた、介護・福祉施設向け通販カタログ「スマート介護」を始め、注目を集める多くの事業が立ち上がっています。

日本の経営者の多くは、2020年東京オリンピック以降、ゼロ成長社会が更に深刻な事態を招くと危機感を高めています。
「起業立国日本」の実現には、大手企業の「ベンチャーM&A」と「企業内起業」が活性化のカギとなります。オールジャパンで取り組み盛り上げていきたいものです。

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