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コラム

第207回

「老いは人類の冒険」

老いて日々生きるとは70代、80代、90代がどのようなものか発見する過程であり、ある意味、未知への冒険だとボーヴォワール(フランスの哲学者)やバーバラ・マクドナルド(アメリカのフェミニスト)のような「老い」を追求した知識人がおっしゃっています。

それにしても、平均寿命が年々伸びている事や、超高齢化社会であることは百も承知のはずでしたが「70代からの生き方!」「80代の生き方」「100まで元気に!」と、まさに100年生きる事が前提の書籍が年々増えていることに改めて驚愕しています。

書店が強勢を誇っていた20年ほど前までは60歳で引退や隠居が当たり前のようなエッセイ本や、有名学者の方々の老後の指南書のようなものがひっそりと並び、むしろ若者を鼓舞する内容のビジネス本が多かったのですが、今や人生100年時代、持病があっても多少の不自由があっても現代の医学は命を守るので100歳は平均寿命になりつつあります。

そういう流れもあるのか最近50代で起業される方にちょくちょくお目にかかります。

流石に50代での起業となると、それなりの組織は作られてから、あるいは企業から独立した形が目立つのですが、驚くのは、純粋な若者のような情熱と行動力です。寿命が100年前の約倍ですから、50歳は25歳?くらいのような感覚でしょうか。

立ち居振る舞いも青年のような清々しさを感じる方もいらっしゃいます。

50の声を聞いたら10年後の引退後の生活を考えていた時代とは大きく違って100歳まで時間があれば、70を過ぎて起業しても30年の間にイーロンマスクのような世界一の長者になる可能性が無いとは言えません。テスラの創業は2003年なので20年も経たないうちの今です。という事で、50代60代でもやりたいことがある方は起業するのに遅いということは無いのです。

生きるという冒険の中に新たな経験による楽しみも増えるのではないでしょうか。60歳から40年、70歳から30年、80歳から20年何をされますか?

趣味に浸れるのは、せいぜい10年だそうです。

ボーヴォワールは、老いたら老いたことを是として受け止めて、芸術家以外はその道をはずれるべきと、知識人や政治家に対して辛辣な指摘をしています。知識は枯渇するし、政治家や権力者は昔の栄光に固執する傾向があるからです。

ところが芸術家は老いてもその才能は伸びこそすれ枯れないそうなのです。なので、芸術家以外は自分の特技や特性をこれまでの仕事と違う分野で活かされたほうがいいようです。

確かに、伸び盛りのベンチャーやスタートアップ企業の経営者に対して、違う業界の重鎮だった方や専門職であった方の指摘が事業成長に貢献されているのは良く聞く話ですが、ビジネスに関わらずとも身近で出来る事は探せば見つかります。

仕事とは目の前の穴を埋める事と教わりましたが、生きている限り自分のできる仕事を探し続けて、老いという人類に課せられた冒険を続けるしかなさそうです。そう、リスクを覚悟で進むしかないのですよ。

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