第331回
AI社会は、人に投資する企業が生き残る
企業のインキュベーションに費やしてきました。
どうすれば人と組織の成長は実現できるのか。
その問いを追い続ける中で、個人のモチベーション、社会と環境の変化、組織の意思決定の論理といった様々な要因が、インキュベーションの成否を左右することを学んできました。
近年、AIが急速に台頭し、技術革新が社会の前提を塗り替える中で、私は「働くことの未来」について改めて深く考えるようになりました。とりわけ、未来を自ら切り開くために社内外へ積極的にアクションするリクルートの姿勢には、今の時代に必要な驚きと示唆があります。

社員の意思決定を尊重し、キャリアの形成を会社が支援するというスタンスには、AI時代の働き方のヒントが隠れているように思います。AIを人間の仕事を奪う存在ではなく、人間の可能性を増幅するツールにするためには、企業が人の成長を信じ、機会を与え続ける文化が不可欠です。
実際、AIの進展が急速な米国をはじめ、日本の大企業でも若手の失業率が上昇しています。
人が効率的に配属される“資源”のように扱われていることが一因ではないでしょうか。
イノベーションを生み出す企業は、人材を「潜在能力を開花させる資源」として捉えてきました。AIが労働市場を再構築する時代の本当の勝者は、自動化に依存する企業ではなく、人材を貢献者として投資し続ける企業です。
社員が技術を使いこなし、新たなスキルを身につけ、新しい役割を引き受けること。そして自分自身のストーリーを書き換えること。それを“特別な挑戦”ではなく“当たり前の営み”にしているのがリクルートグループの文化です。
会社の役割は、社員それぞれの変化への旅を支援し、その挑戦を積極的に後押しすることにあります。
これからの時代、個人に最も求められるのは投資意識を強く持ち、好奇心・自発性・目的意識を絶やさないことです。「Follow your heart」という言葉が象徴するように、個人は自ら会社の目的を達成する方法を考え抜くと同時に、自分のキャリアの目標が会社の目標と一致しているかを常に自問し続ける必要があります。
私はイントレプレナー塾で、企業のベクトル、自分のベクトル、社会のベクトルの三つを重ね合わせることがイノベーション成功の大きな要因だと伝えてきました。

これからの社会は、絶え間ない変革を求められる世界です。そのなかでレジリエンスを発揮するための青写真として、私はこの考え方を今後も伝え続けたいと思っています。
こうした企業文化を育てられる企業こそが、これからのAI時代において輝く存在になると私は考えています。
