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コラム

第319回

地方創生の課題と今後の方向性

2014年から政府が推進してきた「地方創生」は、東京一極集中の是正と地方の人口減少に歯止めをかけることを目的に、多額の予算を投じて実施されてきました。

スタートアップ支援やテレワーク施設の整備など、多様な政策が展開されたものの、10年が経過した現在も人口減少や都市部への集中傾向に大きな変化は見られません。

この要因の一つとして、地方創生の政策策定が自治体主導ではなく、外部のコンサルタントや一部の専門家に委ねられたことが挙げられます。

その結果、多くの地域で似たような施設整備やスタートアップ支援イベントが行われたものの、地域ごとの特性を活かした独自の取り組みが不足していました。特に、地域経済を支える地元企業の経営者や、企業内で起業家精神を持つ人材の活用が十分に進んでいない点が課題として浮かび上がります。


企業が付加価値を生み出すには、従来の物的資産ではなく人的資産を活かしたイノベーションが不可欠です。そのためには、企業内起業家と投資のマッチングが重要な役割を果たします。

また、地方創生の総合戦略策定において、多くの自治体が外部委託を活用した背景には、政府からの財政支援を受けるために迅速な計画提出が求められた事情もあります。
その結果、見栄えの良い計画は作成されたものの、地域の実情に即した実効性のある政策が十分に議論される機会が失われてしまいました。

さらに、各自治体が移住者誘致のために競争し、補助金やプレミアム付きの短期的な施策が多く見られたことも問題です。

本来、地方創生は地域の持続的な発展を目指すべきであり、単なる移住促進や消費喚起ではなく、長期的に地域に根付く雇用創出や産業振興に、地域企業と共に注力することが求められます。

今後の地方創生に求められるのは、自治体や外部ブレーンだけに依存するのではなく、地域の経済界や大学、企業の経営者、そして起業家精神を持つイントレプレナー(企業内起業家)を巻き込んだ取り組みです。

地域の未来を担うイントレプレナーが主体となり、地域企業の実情に即した戦略を策定し、新たな産業の創出を促進することで、持続可能な地方創生が実現できるでしょう。政府もまた、地方に対して一律の施策を押し付けるのではなく、地域ごとの企業の自発的な取り組みを後押しし、それぞれの強みを活かした成長戦略を支援することが求められます。

今後の「地方創生2.0」では、単なるインフラ整備や移住促進ではなく、地域経済を担う企業の主体性を尊重した「企業内起業」こそが、本質的な地方活性化の鍵となるでしょう。

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