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コラム

第8回

「カメラの守護神」

社長室の壁面に、ずらりと並ぶライカカメラを背中に、次から次へとアイディアにとんだ楽しいお話を聞かせて頂けるヨドバシカメラの藤沢社長。

シャープでピントがあった感性と、人心を瞬間に止めるトークは、カメラの守護神に教えを頂いているような不思議な気持ちになります。

これまでの永いおつきあいの中で、折に触れ、時代の寵児と呼ばれる方々をお連れして情報交換をしているせいもあってか、吉井と話されている時には、とても楽しそうで、本音の話はもちろん、新しい閃きや、独特のしゃれが入った含蓄のある言葉をお会いするたびに伺います。

それにしても、淀橋の上に建っていた、一軒のカメラ屋さんが、30年の間に7,000億強の売上規模の企業となったその「芯」は何だったのでしょうか。

朝は、だいこんおろしがあればいいとおっしゃるくらい、必要以上の贅沢はせず、趣味はカメラ(だと思うのです)と炭焼き、そして愛犬を連れての早朝の散歩を楽しまれておられます。でも、話を伺っていると何より仕事が一番の楽しみだとの思いが伝わってきます。

売場の変更等、現場に関しては、どんな早朝でも、藤沢社長は必ず見えていると、関連の人々は感心しています。創業時から、CMコピー、CMソング、はてはビルデザインまで、御自分で発想されてきました。その気合も半端なものではありません。

全てが御自身の表現です。お客様の求めていることを常に察知し、現場でそれに答えてきたスーパー経営者の経営姿勢は、お会いするたびに、感銘を受けます。

そして、今日のような激変の時代、スーパー創業者の事業承継には、「芯の確認」が最も必要だという事も確信してしまいます。

いつの時代にも通じる、芯の部分の判断基準は家訓ではない、経営理念をあらわす「芯」の伝承が、会社を存続させることに繋がるのだと思うのです。

藤沢社長のモットーは、(私なりの勝手な理解)しゃれ好きなので、「いきあたり、ばったり」とか「とりあえず」とか、笑顔でおっしゃるのですが、やはり、根本は、前向きな、チャレンジ精神であるように思います。

もちろん、チャレンジする前に御自身の目で見て、納得されるまで、あらゆる確認をされ、結論を出されます、後は、ぶれることが無く、その後のスピードは見事です。

過日も、突然思い立って、欧州へ海外旅行に出かけられたそうです。「えー!お一人だったのですか!何かあったらどうするのですか」「いやー、ツアーだよ、ひょいといけるよ」「でも、お一人であちこち、街を歩かれたじゃないですか」「まあ、身振り手振りで、なんとかなるものだよ」「でも、何かあったら」「そん時は、そん時だね」という具合です。それでも、商売のヒントを掴んでいらした御様子で、とても、ご満足そうでした。

御顔は、いつもつやつやで、身軽でお若く、頼もしい限りです。 この秋、秋葉原に、巨大なヨドバシ店ビルがオープンしますが、ますます、「お客様の欲しいものをより安く、早く届ける」事に全力投球であらゆる事に、チャレンジされていかれるのでしょう。

帰る際に「そうだ、人生はいきあたり、ばったりだ!しかし、バッタリ倒れちゃいかん!」と、優しい笑顔で、送って頂けました。

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