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コラム

第42回

「歌舞伎」

先日、東銀座で歌舞伎座の観劇を見た。常日頃感じることのない異質な時間と空間、着物姿のおしゃれな装いの彼女達、楽しそうな談話姿、若い世代の女性、立ち見の人達までいることに驚いた。

日頃、訪れることのない歌舞伎世界に対して、自分の持っていた概念とイメージがみごとに崩れた。現在、これだけ様々な娯楽があるにも関わらず、歌舞伎が四百年以上も、人の心を魅了してきた「コア」は一体何なのだろうか?

今のように情報メディアがない時代、世相を映す事件を基にしたコンテンツを、「歌舞伎にして、全国行脚するワイドショー」は、人々の暮らしの楽しみだったのかもしれない。

また、役者の名前が、「何代目の團十郎」と語り告がれるヒーローは、どの時代にも存在している永遠の存在である。自分の親や祖父、祖母とも、共通の話が弾む話題となる。

日本を代表する文化にまで育った歌舞伎は、先人の人々が時代の空気を感じ取り、それを表現する為に考え抜いた、知恵と努力の結晶とも思える。帰る道すがら、歌舞伎の歴史に比べ、最近の打ち上げ花火のような、IT系の華々しいデビューを飾った多くのベンチャー企業は、何故こんなにも継続する力が弱いのだろうか?と思った。

四百年とまでいわないにしても、企業が継続発展してゆく条件は、何なのだろうか?人にも企業にも生まれた時から、年齢がある。企業年齢は、その「絶対年齢ではない」ということを、意外と気がついている経営者が少ない。事業には、生命サイクルがある。

ホンダやソニーそして京セラの創業期、トップ達は、「永い年数をかけてでも、絶対にこれを創り確立する」と自分一代ではできないような百年の計を、自分の言葉で語っている。

社会の中に永く受け入れられるには、当然、価値、レゾンデートルが求められる。これを確立してゆくには、自分の固定した会社への絶対年齢でなく、 2010年、2020年から今を見つめるような目線で、「これだけは何が何でも創る」こだわりのコアを確立するこが、揺るぎない社会でのポジションを獲得することに思える。

あなたも、時には東銀座や浅草にいってみたらいかがだろう?きっと、そこには何か発見があるはずだ。・・

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