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コラム

第57回

「ナスダックの火種」

「これからの社会は、私たちを心底ゾクゾクさせてくれるだろうか。21世紀の日本人が笑顔で生き生きと喜びに満ちた人生を歩むためにどうしたらいいだろうか?

変革の時代、これまでの延長でない仕組みで、社会の意識を変え、元気な会社を一社でも多く創生し、1人でも多くの人の雇用を創造してゆこうと考え、インキュベーション事業をやることに致しました」。1995年4月、私がインターウォーズ設立時に出した案内文に綴った決意である。

1999年6月、ナスダックジャパンは、華々しくデビューした。
当日の発表会場は,多くの企業戦士達の熱気に溢れ、孫正義氏の語る未来に、新たな時代の曙光が見えた。

会場にいた私は、ナスダック市場の誕生が、ようやく日本にもこれまでにないスピードと意識が芽生え、社会にインパクトを与える予兆感じた。

そして、これまでにない公開基準値と、3市場の出現は新興企業の大量上場時代の幕開けとなった。多くの経営者たちのモチベーションは上がり、スターバックスコーヒー、有線ブロードネットワークス、パソナをはじめ98社、時下総額一兆五千億の市場が生まれた。

それから2年、今年度中に米ナスダックが日本から撤退する。新興企業に、米国に準じた世界標準を取り入れて市場を提供し、株式市場そのものに競争原理を導入した。

そして、これまで平均23年もかかる上場までの年月を短期にし、市場から資金を集めるベンチャー企業育成支援の仕組みが創生された。二年余の実績ながら、ナスダックジャパンの、これまでになかったインパクトを与えた功績は極めて大きい。

首脳陣に対し厳しい批判や責任を問う声が、いたるところで合唱されている。公共性の高い証券市場を、簡単に撤退することの善悪は論じるまでもないが、舞台を創り多くの起業家に夢と希望を与え、一兆を超える時価総額を生み出したベンチャー企業支援の実績を残した。

親しくしている多くの経営者仲間もこの市場でデビューし、市場から集めた資金を活用し元気に、事業を展開している。「デフレ!19年ぶりの株価8,000円台!倒産!リストラ!・・」聞き飽きた。

今後、残された2つの市場に向け、現実直視しながら未来の日本をリードするカンパニーを一社でも多く、そして本物の経営者を一人でも多く支援してゆきたい。 

先進国の中で、開業率が閉業率より低い国は日本だけといわれている。ナスダックジャパンの残した火種を絶やさず、継承してゆきたいものである。

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