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コラム

第116回

「プロフェッショナル」

「プロフェッショナル」という言葉を、最近よく聞く。どうも核心から離れている様に感じる。企業間において、その道の経験や知識豊富な何でも知っている「スペシャリストな人」を、「プロ」と呼んでいることがある。

しかし、スペシャリストとプロフェッショナルは、似て非なるポジションだ。スペシャリストとは、与えられた環境には適応でき、定められたやり方であれば仕事を完璧にこなす人をいう。

過日、セミナーで出逢った浅草のそば屋の4代目になる女将から、力強い話を聞いた。
「3代のれんを守れば本物といわれるじゃない。のれんを守るには、時代に対する適応力がないようじゃ、商売なんか絶対に続かないのよ!うちは、もともとお菓子屋だったのよ。真面目に頑張ってやってますじゃ、駄目になっちゃうのよ。いつも、アンテナ高く張って、情報キャッチして、のれんをイノベーションしてなきゃいけないわけよ!」と、信念を貫いて生きている女将の力強い素の日常会話スピーチに、余韻が残った。

常に浅草でのそば屋の位置づけを認識しながら、一人ひとりのお客様に質の高いサービスを提供し続け、店を変革している下町の女将の姿に、プロフェッショナルを見る思いがした。

私はこれまで、ジェネラリストでも、資格を持ったアマチュアでもなく、スペシャリストでもない、プロフェッショナルを感じる人たちと共に仕事をし、彼等の仕事への考え方やスタンスに触れてきた。面白いことに、彼らが語る言葉に共通項がある。それは、会話で使うボキャブラリーが、通常の人達と違うということだ。

彼等が、一日に話すことをすべて書き留めたら、通常の会社で働いているメンバーとは、まったく違う内容になるはずだ。彼等の話す言葉には、特有のリズムがあり、人を励まし、相手の可能性を広げ、思いやりや感謝の言葉がいっぱい詰まっている。

否定的なことや、人の悪口や、ネガティブなことを口にすることはなく、希望的な豊かな未来に向けての内容の会話が多い。そして、何よりも、「顧客との約束を守る」ことに関し、どんなことをしてもやり遂げる内容の話をよくする。

プロフェッショナルな人達は、たとえ環境が変わっても、変化の本質を読み取り、状況を見極めながら、顧客との約束を守り、対価を得て、人や組織を正しい方向へインテグレート(合成する)し、筋を通すビジネス・プロフェッショナルの要件を持っている。

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