第335回
経営トップの新しい王道

ここ数年、CFO(最高財務責任者)からCEO(最高経営責任者)へと昇格するケースが目立って増えている。ソニーグループの十時裕樹氏をはじめ、国内外で同様の人事は珍しくなくなった。
背景にあるのは、CFOが担ってきた役割そのものだ。
CFOは企業と市場をつなぐ最前線に立ち、投資家やアナリストと日常的に向き合う。その過程で、短期的な業績だけでなく、企業価値を中長期でどう高めるかという大局観が自然と磨かれていく。
厳しい市場との対話は、経営判断に必要な胆力と視座を育てる場でもある。
こうした経験は、CEOに就任してからも強力な武器となる。CFO時代と連続性のあるキャリアを背景に、資本効率や投下資本規律を経営の中枢に据えることができるからだ。
産業構造の変化が激しく、将来の不確実性が高まる時代において、短期の経営目線に偏らず、市場目線で課題を分析し続ける力は、これまで以上に重要になっている。
さらに、M&Aや事業売却を含めて事業ポートフォリオを大胆に見直す改革者としての期待も、CFO出身CEOには集まりやすい。数字と市場の論理を踏まえ、感情論に流されずに意思決定できる点は、大きな強みだ。
今後も、CFOからCEOへという流れは加速していくだろう。企業価値向上を軸に経営を貫くリーダー像が、求められている。
