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コラム

第323回

地方創生×スポーツ

世界はいま、AIの進展によってこれまでにない社会を迎えようとしている。自動化や効率化が急速に進み、多くの業界が「AIインパクト」によって変貌し始めている。しかしその一方で、スポーツはAIから距離を置き、最後まで人間の心と体が主役となる稀有な領域だ。勝敗がはっきりし、感情を揺さぶるその瞬間は、実にすがすがしく明快である。

ワールドカップやオリンピックを見ればわかるように、国境や世代を越えて人々の心をひとつにするのは、まさにスポーツの力だ。観戦する喜び、プレーする感動、応援する一体感。これらは社会に希望を生み出し、地域社会の未来を動かす原動力となる。

「スポーツ」の語源はラテン語の「deportare(港を離れる)」に由来し、日常から離れて余暇を楽しむという意味を持つ。まさに非日常の体験が、人々に活力と結びつきを与えるのだ。

エンタメ性から地域の象徴へ


かつて日本でプロバスケットボールリーグ「BJリーグ」が立ち上がった際、エンタメ性を重視した演出が注目を集めた。光や音楽、チアリーダーのパフォーマンスによって、まるでライブ会場に来たような高揚感を生み出し、10年後には年間100万人を超える観客を集めるまでに成長した。その後、Bリーグへと移行し、「夢のアリーナ構想」を掲げながら、スポーツを軸にした地域創生の旗印を明確にした。

単なる競技場ではなく、地域の誇りとなる拠点をつくることで、地域経済の活性化、関係人口の拡大、ウェルビーイングの向上といった大きな波及効果を目指している。

スポーツが生む地域創生の循環


Bリーグが進める「BASKETBALLアリーナスポーツ」活動は、クラブと地域社会を一体化させる取り組みである。地域密着型のクラブが増えることで、地元企業との連携が進み、スポンサーシップや雇用が生まれ、観光資源や商店街の活性化にもつながる。すでにクラブ数は50を超え、地方創生の実践モデルとしての役割を担っている。

スポーツイベントは、試合そのものに加え、宿泊・飲食・交通といった周辺産業への経済効果をもたらす。さらに、地域の子どもたちに夢を与え、世代を超えた交流や健康増進の機会を広げている。こうしてスポーツは「観る」だけでなく、「支える」「育てる」「地域を動かす」存在へと進化しているのだ。

スポーツは地域の未来をつくる


AIが進化し、効率と合理性が求められる社会だからこそ、人と人とが心を通わせるリアルな体験の価値は一層高まる。スポーツは、その象徴であり、地域社会を再生する力を秘めている。

地方創生の大きな起爆剤として、スポーツはこれからますます重要な役割を果たすだろう。人々の絆を強め、地域の誇りを育み、未来への希望を灯す。その舞台は、地方にこそ広がっている。

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